「フィンテック」ブームの震源地・米国で懸念されるバブル崩壊

 

(3)信用調査のための新たなデータの活用

冒頭のレンディング・クラブの事例からも明らかなとおり、様々なフィンテック関連企業の中でも「P2Pレンディング」は、特に注目の事業領域とみなされている。

2015年6月、モルガン・スタンレーの調査部門は、「P2Pレンディング」に牽引され国際的な現金融資市場(Global marketplace lending cash)の年平均成長率は、2010~14年まで123%2014~20年まで51%の高成長を維持するとのレポートを発表 。

また、その1年後の2016年6月にも、ニューヨークに本拠を持つ金融専門ウェブ・メディアのレンディング・タイムズ(LendingTimes)が、このモルガン・スタンレーの予測値を引用したうえで、「P2Pレンディング」などの新たなレンディング手法の普及を背景に、これまで一般的だった伝統的な信用調査向けのデータではなく、それに代わる新たなデータ(“non-traditional” data、Alternative dataなどと呼ばれる)の活用が重要になるのは当然だと指摘する特集記事を掲載 。

その他にも、ビッグスリー(Experian、Equifax、TransUnion)が調べないより広範なデータが重視される可能性を報じる記事も報じられている。

それらによると、社会人1年目や外国からの留学生などのほか様々な理由から、伝統的な信用調査向けのデータが不足している人でも、今や多くの人々がスマートフォンを所有し、オンラインで電話代や公共料金を支払い、Eコマース・サイトでショッピングし、Eメールやソーシャル・メディアを活用している。

そのような活動の多くは、デジタル・データとして記録が残る。英語ではこの記録をデジタル・フットプリントなどとも呼ぶ。

こうしたデジタル・フットプリントを、「P2Pレンディング」という新しい融資手法における新しい信用調査向けデータとして活用する動きが急速に拡大中。

すでにそのために役立つウェブサービス、例えば、アカウント上から各種料金支払い記録などを確認できる会計管理ウェブサービスのクイックブックス(Quickbooks)やペイパル(Paypal)や、その他オンライン・バンキング口座なども多数存在する。

これらの新たなデータや、個人のEメールやソーシャル・メディア・アカウントの履歴などの情報も含め、信用調査向けのデータとして活用する企業として、例えば、レンドゥー(Lenddo )やマイクロビルト(Microbuilt )などが存在する。

こうした新たなデータを活用する信用調査会社は、その精度を高めるため様々なデータを組み合わせ、独自の分析手法で審査を行う。

例えば、レンドゥーは12000もの項目で新たなデータを収集、分析するとのこと。

ただし、これらの企業が実際にどのように様々なデータを組み合わせ、独自の分析手法で審査を行っているかは企業秘密のため明らかにされていないが、レンディング・タイムズの報道では、すでに広範な領域で新たなデータの収集と分析が行われているとのこと。

また、2016年11月に公開されたマッキンゼー社調査レポート(Bracing for seven critical changes as fintech matures )によると、国際的に事業展開する金融情報とデータのプロバイダーのIHS Markit社の株価は、2015年10月から2016年10月までの12ヶ月間で年率20%も上昇。

フィンテック関連企業への注目が高まったことにより、国際的に活動する金融情報やデータの専門業者の評価の高まりにつながっている模様だ。

なお、IHS Markit社の2016年の1年間の株価の推移については年率36%上昇となる見込み。

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