私が韓国の「慰安婦像ブーム」を見てよく連想するのは、私の小学生時代に中国人が台湾に進駐してきて、日々学校で軍歌を教え、学生が街に出て密告運動を叫びながら隊列を組んで練り歩く姿、そして、あっというまに蒋介石の石像、銅像、半身像など4万体が作られたことです。
学校、病院から市町村の役所に至るまで、平均1平方メートルの空間があれば、一体以上の蒋介石像が設置されていきました。犬も歩けば棒に当たるというより、蒋介石像にあたるというほどだったのです。
しかし時代や政権が変われば、こうした蒋介石像を捨てるのも大変な作業でした。それは蒋介石にかぎらず、スターリン像もレーニン像も同じでしょう。
世宗大学教授のパク・ユハ氏は著書『帝国の慰安婦』で、日本軍が強制連行したのではないこと、慰安婦の斡旋に朝鮮人業者が多く関与していたことなどの事実を書き、あまりにも慰安婦が偶像化されていることを批判しましたが、そのために名誉毀損で刑事告発され、検察から懲役3年を求刑されてしまいました。
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それでも韓国司法にも少しは法の精神が残っていたのでしょう、裁判所はパク・ユハ氏を無罪としました。
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こうした事実が少しずつ韓国社会にも出てきたこと、さらに2015年に日韓合意がなされたこと、日本人の嫌韓感情の高まりなどを前にして、市民団体による強引な慰安婦像設置を「慰安婦ビジネス」や親北派による工作活動として捉える韓国人も多くなってきたと思われます。前述のネットユーザーの声がそれを表しています。これに対する嫌悪感が韓国国内で出始めたということなのでしょう。
そのため最近、韓国では慰安婦像を巡って国内が二分するような事態になっています。釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦像では、その撤去を求める韓国人男性が「LOVE JAPAN」といったプラカードや反日感情の煽動を諌めるビラを貼ったりして、市民団体の間で摩擦が起きていると報じられています。
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また京畿道議会の団体が竹島に慰安婦像の設置を推進する運動を起こしていますが、これに対しても韓国政府や竹島を管轄する慶尚北道から批判と反対の声があがっています。
ちなみに京畿道は3・1運動でもデモの参加者が多かった地域であり、また北朝鮮と国境を接していることもあって、北朝鮮スパイもさかんに活動している地域と見られています。それだけに反日を利用した政治活動が起こりやすい地域でもあります。