元ANAのCAが疑問視。日本はトランプを批判できる立場なのか?

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トランプ大統領が「7カ国の国民や難民の入国を制限する」という大統領令を出したことは、米国内のみならず世界中で大きな騒動となりました。さらに、これを受けて日本の航空会社「JAL」「ANA」の2社が「対象国の人々の米国便への搭乗を断る方針」を決定し、その対応を批判する声も挙がっています。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の著者で、元「ニュースステーション」気象予報士にして、元ANA国際線のCAでもある河合薫さんは、「米国は人種差別の国」という日本の識者の見解を疑問視。河合さん自身が米アラバマ州で過ごした幼少期の経験を紹介しつつ、「米以上に外国人に対して閉鎖的なのは日本ではないか?」と持論を展開しています。

トランプの尻はイイ?

トランプ米大統領が大統領令で、中東・アフリカの7カ国の国民や難民の入国を一時禁止しました。

ANAとJALが1月30日、対象の人の米国便への搭乗を原則として断る方針を決めたとのNewsが報じられてから、SNSだけでなくテレビに出ているコメンテーターまでもが「なんでそんなことするんだ!」と批判していたのには少々驚きました。

これは国際航空運送協会(IATA)からの通告による措置で、IATAは世界の航空会社でつくる業界団体です(通告の強制力はない)。

そもそも航空会社には「乗客を最終目的地まで届ける義務」があり、今回のケースではなんらかの措置をとる必要があります。

入国許可がない人を精査せずに搭乗させれば、航空会社に制裁が科される恐れもある。

なので「原則として断る」という方針以外手立てがないのです。

みなさんも飛行機に乗ったときにCAが「入国書類お持ちですか?」と機内を歩く姿をみたことありますよね?

あれも「最終目的地まで届ける義務」が航空会社にあるからに他なりません。

別にCAがヒマをもてあましているわけでも、やさしさから「お持ちですか? 大丈夫ですか?」と乗客ひとりひとりに丁寧に声をかけているわけじゃない(はい、私は元ANAのCAです)。

なので「日本は日本として……」というコメントはあまりに知識不足といわざるをえません。

国際線キャリアは、これまでも世界情勢にさまざまな影響をうけてきました。

天安門事件のときには、救援機で血だらけになった日本人の方たちを北京まで迎えに行きましたし(私は乗務しました)、湾岸戦争のときにはロンドンやパリ便は空席だらけで、CAの数が乗客を上回ることもありました。

250席あるエコノミークラスに、たった3人しか乗っていなかったときは「ひざまずきサービス」でもしようかと思ったほどです(笑)。

空港のセキュリティチェックも厳しくて「ワイヤーの入ったブラはしないように!」という指示が会社から出されたこともありました。

ただ、空を飛んでいると、どこにも国境線は引かれていなくて。

ただただ大きな空と広い大地が広がっていて、パスポートの色は違ってもわがままな客はわがままだし、温かい客は温かかった。言葉が通じなくても身振り手振りで、長いフライトの退屈な時間を埋めたこともありました。

ですから日本の航空会社まで、大統領令に屈しなくてはならないことが、個人的にはとても悔しかった

と同時に、「アメリカは建前の国。ホンネの政治になった」とコメントする識者に少々違和感も抱いています。

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