日本には創業100年超えが10万社。世界がひれ伏す老舗企業の共通点

 

日本古来の木ロウ技術がコピー機に取り入れられた

株式会社セラリカNODA」というと、いかにも現代企業のようだが、創業は天保3(1832)で、すでに180年近い歴史を持つ。福岡で木ロウの製造と販売を営んできた。

木ロウはウルシ科のハゼの木などの実に含まれる脂肪分を抽出して作られ、ロウソクや鬢付け油に使われた。近代に入ってからは男性整髪料ポマードの原料としても使われてきた。しかし、昭和40年代半ばにヘアトニックなどの新しい整髪料が登場すると、家業は危機に瀕した。

ちょうどその頃、先代社長が急逝し、広島大学で情報行動科学を学んだ息子の野田泰三氏が、急遽、会社を担うことになった。

野田氏が、木ロウの新しい用途はないかと考えていた時に、ひらめいたのが、自分が学んだ情報分野の知識から、コピー機のトナーに使えないか、というアイデアだった。木ロウは熱に溶けやすく、しかもその後すぐに固まる。この特長を生かせば、印字しやすく、かつ擦れにくいトナーができるはずだ。

おりしもコピー機業界はアメリカのゼロックス社の独壇場を崩すべく、まったく新しいトナーを作り出そうという気運が高まっていた。野田さんは、飛び込みでキャノンやリコーに売り込みをかけ、その主張が実験で裏付けられるや、トナーの添加剤として次々に採用されていった。

こうして日本古来の木ロウ技術が情報産業の最先端に取り入れられたのである。

「生かす発想」へ

ロウは昆虫からも採れる。カイガラムシは樹液を吸ってしまう害虫だが、真っ白な「雪ロウを分泌する。この雪ロウは光沢があり、化学的にもきわめて安定しているため、防湿剤や潤滑剤カラーインクの原料として有望な可能性を秘めている。

野田氏は、中国側と共同して、カイガラムシが好むモチの木を、内陸部の雲南省と四川省の山間部に50万本植え付けた。これをカイガラムシに食べさせ、雪ロウをどんどん分泌させる。これを現地の農民が採取し、日本で製品化して販売する。

中国での環境保全と農民の貧困救済を同時に追求できる。野田氏は語る。

人間は地球の王様みたいになりましたが、昆虫のほうはおよそ180万種もの多様な生物種として存在している。それなのに、人間が「益虫」とみなして利用してきたのは、ミツバチとカイコくらいなもので、あとのほとんどは「害虫」と邪魔者扱いしてきました。農薬とか殺虫剤でどんどん殺してきたわけですね。こういった人間からの価値付けだけで、邪魔者を排除する発想が、開発のために自然を破壊する行為にもつながっているんですね。
(同上)

いままでの「殺す発想」から「生かす発想」に転換する必要がある、と野田氏は説く。

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