中国の領海侵犯は本当か? 海保も認める「暗黙のルール」を徹底検証

 

1.尖閣で中国公船が頻々と領海侵犯しているではないか?

海上保安庁のホームページを見ると、トップページの上の方に「尖閣諸島周辺海域における中国公船及び中国漁船の活動状況について」というメニュー表示があり、それをクリックするとこのようなグラフが出てくる。

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◆海保HPのグラフの謎

赤い棒グラフは中国公船が尖閣の日本の領海に侵入した月別の隻数、青い折れ線グラフはその外側の接続水域に入った隻数を示す。煩雑なので赤い棒グラフだけを取り上げるが、見るように、野田政権が尖閣の一部国有化という愚挙に出る以前は、ほとんどない。12年9月から跳ね上がるように始まって、13年8月に28隻というピークを迎える。しかし、丸1年が過ぎた13年10月からはかなり鎮まって、大体月に10隻前後で今日至るまでほぼ横ばいが続いている(例外は16年8月でこれについては後述)。

さらに、このグラフの下に表があって、それぞれの月の何日に何隻来たかのデータがある。それを見ると、何やら一定のリズムがあって、月に標準で3回、たまに2回の時もあるが4回という時はない。1回当たりの隻数は標準で3隻、たまに2隻や4隻のこともある。今年に入ってからもそのペースは変わらず、1月は3回で4+3+3=12隻、2月は2回で3+4=7隻、3月は3回で3+3+4=10隻で、この3年半の間ずっとこのペースである。

たまに新聞でも、産経と読売がほとんだが、小さなベタ記事で「中国公船、また尖閣領海に」というのが出る。それを見ると「また中国は尖閣でウロウロしているなという印象だけが残るが、毎回記事になる訳でもない。毎回きちんと出るなら、逆に注意深い読者は月に3回ペースであることに気づくはずだが、そうもなっていない。

不思議に思って海保に訊いても、「それだけ頻繁ということです」としか言わない。それで知り合いの中国人ジャーナリストに中国側から事情を探って貰うとビックリ仰天の事実が分かってきた。

◆月3回計10程度の意味

中国の海警局には、北海と東海と南海の3分局があり、尖閣は東海分局の担当。その下に上海、浙江、福建の3総隊があってそのそれぞれが月に1回出て行くことになっているから月3回」となる。1回当たりは3隻が標準ユニットで、たまに都合で2隻になったり4隻になったりもする。目的は、中国が尖閣の領有権を主張していることを継続的にデモンストレーションすることなので、これで十分だ。余計なトラブルにならないよう、1回につき日本の主張する領海内に入るのは1時間半と決めていて、しかも15年冬以降は事前に日本の海保に明日行きますからと事前通告するようにしている。それで海保も「いつ来るか」と待ち構えていなくてもいいので、だいぶ楽になったと思いますよ……。

──それは、中国側が一方的にルール化しているのか?
「その通りで、海保も暗黙の内にそれを受け入れている」

 

──それって「馴れ合い」というか、事実上の「棚上げ」ということではないか。
「中国側はそう捉えている」

つまり、「月3回」というのが「頻々」に当たるかどうかは双方の見方は異なるかもしれないが、少なくとも一触即発、いつ戦闘が起きるか分からないというような緊迫状態からは程遠く、むしろ逆に、尖閣はかつてないほど落ち着いた状態にあることが分かる。

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