過去最悪の46億円赤字「大塚家具」に眠っている新たな希望

 

大塚家具が策定した新経営ビジョンとは?

大塚家具は3月10日、早期にV字回復を果たすために新たな経営ビジョンを発表しました。

その中心的な施策には「専門店・小型店による多店舗展開」「プロフェッショナルによる提案サービスを前面に」「商品とサービスのオムニチャネル化」「購入だけではない、新しい選択肢のご提供」という4つの柱が掲げられています

まず、「専門店・小型店による多店舗展開」として、大塚家具はベッドなど睡眠に特化した店舗やソファー専門店といった機能特化型や世界のトップブランドに特化したブランド特化型の小型店を50店舗を目途に全国展開することを計画しています。

家具業界は、規模が大きければ大きいほど収益率が高くなり競争を有利に展開できる規模型事業」といえます。ここでボストンコンサルティンググループが考案した「アドバンテージマトリクス」と呼ばれるフレームワークを活用すれば、大塚家具は「規模型事業」として同業のニトリと戦っても勝ち目は低く、何かに特化する「特化型事業に戦略を転換することにより、ニトリを上回る収益率を実現することも可能になります。

このようにアドバンテージマトリクスを踏まえれば、大塚家具の特化型店舗の多店舗展開はセオリー通りの戦略といえるでしょう。

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また、あまり知られていないことかもしれませんが、大塚家具には800名を超えるスリープアドバイザーが在籍しています。この「眠りのプロ」達が、店舗で接客するだけでなく、ブログやSNSなどを通して、睡眠に悩む多くの人の悩みを解消するような情報を発信し続ければ、インターネットを介して「大塚家具=睡眠の悩みを解消してくれるところ」という認知度が高まることでしょう。そして、800名を超えるスリープアドバイザーが決して販売を強いるのではなく、顧客の悩みの解消することを優先させて信頼を獲得すれば、結果として顧客はそのままネットショップで購入することもあるかもしれませんし、また実店舗を訪れて実際に商品を確認して購入することもあるでしょう。これがまさに大塚家具が新たな経営ビジョンで掲げるシームレスに商品・情報・サービスを提供できるオムニチャネル化につながっていくのです。

そして最後に昨今の消費者のライフスタイルの変化にうまく対応することができれば、確実に売り上げ機会の増大につながっていくはずです。たとえば、特に若い世代では「買う」から「シェアする」というライフスタイルの大きな変化が顕著になっています。この変化に対応するためにはレンタルという方法がより消費を刺激するでしょう。また、昨今の「捨てる」から「長く使う」という価値観の変化には、リフォームやリユースという家具業界における新たな消費スタイルの提案が効果を発揮するはずです。

このように大塚家具が掲げる新たな施策はまさに理に適ったものであり、もし実際に実行できればV字回復も決して不可能なことではないといっても過言ではないでしょう。

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