大塚家具の復活に立ちはだかる2つの障害とは?
確かに戦略的にはセオリー通りであり、実現することができれば、確実にV字回復を実現することも可能と思われますが、現実的には大塚家具の前には乗り越えなければならない2つの大きな障害が立ちはだかっています。
一つは、消費者の間で定着してしまった「トラブル」のイメージです。『「親子喧嘩の末に娘が父親を追い出してしまった」というイメージは、それが真実か否かはともかく、残念ながら多くの消費者の間で定着してしまっています。特に家具は長年使うものであり、縁起を気にする顧客にとっては、トラブルのイメージのある家具店から積極的に購入しようという気にはならないものです。いかに新生大塚家具が「幸せをレイアウトしよう」というスローガンを掲げても、消費者の目には逆に白々しく感じてしまうこともあるでしょう。一旦定着してしまったイメージを覆すことは相当難しく、袂を分かつ結果となった父親と和解をアピールしなければ、今後も悪いイメージに悩まされ続けることも考えられます。
この悪いイメージを払拭するためには、たとえば使用期限切れの鶏肉使用疑惑や異物混入でブランドイメージが一時は地に堕ちたマクドナルドの復活劇が参考になるかもしれません。
マクドナルドは立て続く不祥事で過去最悪の347億円の最終赤字を計上するなど、業績は急速に悪化しましたが、顧客の立場に立った安心安全を徹底したメニュー開発やハンバーガー総選挙など顧客を巻き込んだイベントなどが功を奏してイメージの回復に成功し、2016年1月から既存店の月次売上高は15ヶ月連続で2桁成長を続けるなど、V字回復を達成することができたのです。
同じように大塚家具も、消費者の抱くイメージを変えるために積極的にイベントを取り入れ、真の姿を知ってもらうのが効果的といえます。実際に大塚家具は3月末までにリユース家具の愛称を公募するイベントを開催して顧客を巻き込む試みに取り組んでしますし、今後は家具総選挙などの企画で多くの消費者の注目を浴びることも有効といえるでしょう。
また、二つ目のハードルとして、「実現性」が挙げられます。
確かに戦略的には理に適っており、完璧といっても過言ではありませんが、実際に実現できるかどうかは、また違う次元の問題です。新生大塚家具がスタートした頃のビジョンも、オペレーションの問題で達成できなかったことを考えれば、今回のビジョンも実行段階の問題で「絵に描いた餅」になる可能性も十分に考えられるのです。
このハードルをクリアするためには、社員全員が新たなビジョンを理解し、リーダーの思い描く大塚家具の理想像を実現すべく、能力を最大限に発揮して一生懸命努力する必要があるでしょう。
果たして、大塚家具はこの2つの大きな障害を乗り越えて、V字回復を実現することができるのか?
今年度中に黒字化できなければ久美子社長の経営能力にも疑問符が付きかねず、先月開かれた株主総会では社長の退陣は避けられましたが、堪え切れない株主から来年の株主総会では再度退陣要求が突き付けられることも十分考えられるだけに、久美子社長に残された時間はそう多くないといえるのではないでしょうか。
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