森友学園、なぜ許可を出した「日本維新の会」が追及されないのか

 

しかし、松井知事をはじめ維新の面々からは今一つ、この問題に対する当事者意識や責任感が伝わってこない

安倍首相夫妻が森友学園に肩入れし、今井首席秘書官の部下である「総理夫人付き」の職員が動き、財務省、国交省も特別な計らいをしたことは間違いない。

しかし、その周辺には、森友学園の教育に心酔し、愛国小学校新設によって教育現場に風穴をあけようとする維新の政治家たちの存在があったことも確かであろう。

維新という政党は、もとはといえば、敵味方を分けて攻めたてる橋下徹氏の舌鋒とかケレン味の魅力を当て込んで集まってきた烏合の政治集団である。ただし、自治労や日教組を毛嫌いし、日の丸、国歌斉唱を重視する橋下氏のもとに吸い寄せられる人々の思想傾向は自ずから右に偏りがちとなる。

橋下氏が大阪市長になった2011年、当時の維新所属大阪市議、村上栄二氏はしばしば自分のブログに塚本幼稚園のことを書いている。たとえば同年10月15日の記事。

籠池園長夫妻と意気投合しました…この見た事もない景色…衝撃を与えられた一日でした…ここに教育の本物があります。

2012年には、村上氏ら維新の市議が塚本幼稚園に隣接する公園の緑化計画をストップするよう大阪市に圧力をかけたことがあった。塚本幼稚園が園児にラグビーやサッカーなどの球技をさせるためにこの公園を使っていたからだ。

森友学園の籠池氏は、かなり前から政治家と付き合ってきた。2008年7月12日、塚本幼稚園で開かれた「教育再生地方議員百人と市民の会」第10回定期総会で基調講演をしたのは鴻池祥肇参院議員だった。

幼稚園で、このような政治的会合が開かれるのは奇異なことである。

「教育再生地方議員百人と市民の会」の事務局長をつとめる増木重夫氏は、かつて在特会在日特権を許さない市民の会の関西支部長を務めたこともある人物だという。しかも理事長は維新所属の辻淳子大阪市議だ。

極右思想家と維新の議員が結びつき、塚本幼稚園の園児たちさえも巻き込んで、政治的な活動をしていたように受け取られても仕方がないのではないか。

足立衆院議員と籠池氏に接点があったのかどうかは定かでない。ただ、籠池氏の次男、籠池照明氏のブログのプロフィールには、「足立康史衆議院議員私設秘書」と経歴が記されている。

雇用契約をしていたかどうかはともかく、何らかの関わりはあったのではないだろうか。足立議員は、辞任した森友学園の代理人酒井康生弁護士とも知り合いである。

森友学園をとりまく維新の議員たちの声が橋下、松井のツートップに届いていないとは考えづらい。私立小学校新設の審査基準を緩和し、府私学課に事務局を委ねる私学審議会が「認可適当」の答申を出した背景に、塚本幼稚園とつながりを持つ議員たちの活動があったこともまた事実であろう。

安倍総理夫妻もそうだが、維新の議員や首長たちが今になって、森友学園だけを悪者にするのは、フェアではあるまい。維新が主導して真相を明らかにするべきである。そのためには、まずは約束通り、松井知事の証人喚問を実現させ、それによって財務省官僚、昭恵夫人らの招致、隠蔽している資料の公開につなげていく必要がある。

 

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