注目すべきなのは、現在、広東省のトップである党委書記の任に当たっているのが共青団派の若手ホープ、胡春華氏である点だ。
2012年11月の第18回党大会で、当時49歳の胡氏は内蒙古自治区の党委書記として政治局員に抜擢され、その直後に重要行政区の広東省の党委書記に栄転した。
この時点で誰もが分かったことだが、同じ第18回党大会で引退し党総書記のポストを習近平氏に明け渡した前任の胡錦濤氏は「ポスト習近平」を見据えて、自らの引退と引き換えに、この「胡春華人事」を断行したのである。
これによって胡錦濤氏は実質上、腹心の胡春華氏を習氏の後継者の地位に押し上げた。今年秋の第19回党大会で最高指導部が大幅に入れ替わるとき、さらに胡春華氏を政治局常務委員に昇進させておけば、2022年の第20回党大会で習氏が「2期10年」の慣例に従って引退するとき、その時点で59歳の「若手」である胡春華氏は、ほぼ間違いなく、党総書記に就任し、党と国家の最高指導者になるという目算だ。それこそが胡錦濤氏と共青団派が描く「ポスト習近平」への次期政権戦略である。
一方の習氏がこれを快く思うはずはない。習氏はそもそも「2期10年」の慣例を破って自らの任期をさらに伸ばす腹づもりであったし、たとえ第20回党大会で引退するとしても、最高指導者のポストを共青団派の胡春華氏に、ではなく、自分自身の腹心に渡したいところだ。
そのために昨年から、習総書記サイドは胡春華氏の天下取りを潰しておこうと動き始めた。これで一時、胡氏が後継者レースから外されたとの見方も広がったが、この動きに対抗して、共青団派ボスの胡錦濤氏は今年1月に広東省を訪問し、胡春華氏へのテコ入れを公然と行った。