いま家は買うな? 不動産の「2022年問題」がチャンスに変わる理由

 

埼玉県羽生市の悲惨な事例

それをすでに経験した地域があります。かつてNHKでも特集された埼玉県羽生市です。

市は2003年、人口増を見込んで、住宅建設が原則不可となっている市街化調整区域の農地に住宅を建築できるよう条例を定めました。その結果、市街地から遠く賃貸には向かない立地に新築アパートが乱立し、おびただしい空き家を生んでしまったというのです。

政府もこの問題を認識しており、都市農地の保全を推進する姿勢を示し、生産緑地制度の改正も視野に入れているようですが、生産緑地を優遇しすぎている現状にも問題があると指摘されているなど、有効打となるかは不透明です。

そこでカギを握るのは、自治体の構想力とリーダーシップではないでしょうか。

一例として、パナソニック、野村不動産、横浜市が2015年3月から取り組んでいるスマートシティプロジェクト「Tsunashima サスティナブル・スマートタウン」が挙げられます。

ここは生産緑地ではありませんが、横浜市港北区綱島地区にあるパナソニックの工場跡地を活用し、次世代エネルギーシステムの導入をはじめ、さまざまな先進技術の導入による都市型スマートシティの構築を目指すプロジェクトです。開発を進めるのはパナソニック、野村不動産の2社を主幹事とする合計10団体ですが、横浜市も参画して進められています。

これは特殊な例かもしれませんが、介護施設や保育所を運営する企業、ショッピングモールを運営する企業、あるいはコンパクトシティなどの計画都市を、自治体がリーダーシップを持って街づくり構想を持ち、所有者や企業に働きかけることが必要です。

公園や通学路への転換、家庭菜園事業などといった用途は限定されますから、誰かが音頭を取らなければ土地は利益追及の不動産業者に売り渡され、ハウスビルダーの草刈り場となるでしょう。

結果、不動産価格や賃貸物件の賃料が大きく下落しかねないわけです。

個人はどう備えるべきか?

都市部の生産緑地は、通常は駅徒歩10分圏内にあるような立地は少ないため、本来は収益物件としては適さないことがほとんどです。

さらに昨今は投資物件への過大な融資が行われていることが問題視されており、金融庁も金融機関への通達や検査等によって引き締めの方向へと舵を切っています。

そのため金融機関サイドも、賃貸需要が見込めにくい場所への融資は控えるようになるはずです。

また、マンション在庫もだぶついていますから、マンションデベロッパーも売れ残りを恐れ、優良立地以外には触手を伸ばさないでしょう。

つまり、生産緑地跡に集合住宅が無法地帯のように乱立するという状況は想定しにくいと考えられます。

また、立地重視・資産価値重視の家選び・投資物件選びをしたい人にもあまり関係ないと言えるでしょう。

そもそも都心部や駅近には生産緑地はまず存在しないので、地価にしても賃料にしても、都心や駅近では2022年問題の影響はさほど大きくないと想定されます。

影響を受けるとすれば、ファミリータイプのアパートや戸建ての購入を考えている人たちや、すでに所有している投資家になります。

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