怪文書はホンモノだった。強行採決後の出来すぎたタイミングで発表

 

安倍首相は、このまま逃げ続ければかえって傷口が広がることをようやく悟ったのかもしれない。こうなったら、ことのついでに文科省をさらなる悪役にして、「徹底調査せよ」と厳命を下す側に回ったほうが得策と判断したのではないか。

イエスマンの松野文科大臣は「追加調査をしたいと申し上げ、総理から徹底的に調査するよう指示された」と記者会見で釈明するにいたった。とんだピエロ役を仰せつかったものだ。

今治市の資料から見ても、官邸の意図は明白だ。

2015年4月2日に担当者が官邸を訪問した後、今治市は、同年6月に獣医学部新設の特区を提案、12月15日に特区指定を受けた。その約10日後のクリスマスイブに加計孝太郎氏と安倍首相がワインで祝杯をあげている写真が安倍昭恵夫人のフェイスブックに投稿された。2016年8月、内閣府の指示で今治市が平成30年4月開校をめざすスケジュール表を作成した。

内閣府が「総理のご意向」として文部省に圧力をかけたのがスケジュール表作成後の同年9月から10月にかけて。同じころに加計学園理事で内閣官房参与でもあった木曽功氏や、和泉洋人首相補佐官らが前川前次官に面会して、協力を求めたことなども明らかになっている。

さらに11月9日には国家戦略特区諮問会議で京産大締め出しのため「広域的に獣医学部が存在しない地域に限るという条件を設定。今年1月、今治市の特区で2018年4月に開設する一校に限り獣医学部新設ができるという告示を出し、申請者を募集した。開学時期をそこに合わせて準備万端の加計学園しか手をあげられないことを見越した募集だった。

まさに、加計学園のための国家戦略特区である。少なくとも、一般国民の視点とは大違いだ。

これだけ国民がコケにされているのに、自民党内では、いまだ安倍批判の声はオモテに出てこない。石破茂氏の改憲問題をめぐる手厳しい発言、自派閥拡大をはかる麻生氏の野心など、萌芽はみられるが、広がりはない。

6月13日の参院内閣委員会では加計学園に関する質疑をやめさせるため自民党議員から採決の動議が出され紛糾する場面があった。「質問権を奪うのか」「参院自民党は恥を知れ」などと野党議員から怒号が飛ぶなか、委員長が「暫時休憩」を宣言した。

自民党は加計問題に関する追及を長引かせないため、18日までの会期を延長せず、共謀罪法案については、委員会採決を経ずに参院本会議で15日朝成立させた。十分な審理を尽くさず党利党略を優先する暴挙というほかない。

そのうえで安倍官邸は、「追加調査で文書の存在が確認できた」と文科大臣に発表させ、国会閉幕とともに野党の追及の場を奪うことで、報道の鎮静化をはかりたいのであろう。

そうした思惑が透けて見えるだけに、この問題に関する報道を継続すべきメディアの責任は大きい。森友、加計問題と続く首相の権力乱用、公私混同は、国民主権の冒涜であり、決してうやむやに終わらせてはならない。

image by: 首相官邸

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