服が売れない。日本のアパレル業界は、どこが時代遅れなのか?

 

2.企業存続のためのM&A

多くの日本人にとって、企業は個人の上位に存在する概念。個人が企業に所属しているのであって、個人が企業を所有しているのではない。企業は家である。したがって、個人の判断で企業を売却するという発想がない

一方、中国人や欧米人は、個人主義で、企業は利益を得るための装置利益が出なくなれば売却もあり得る。そもそも、未来永劫企業を存続させる意義も感じていない。企業とは、時代と共に変化していくものという認識だ。

さて、業績が悪化して、建て直しができない企業は、どうすべきなのか。倒産させれば、仕入れ先等に迷惑が掛かるし、社員の生活保証もできない。社長自身も個人保証していれば、自己破産は免れない。

もし、企業を売却できれば、建て直しの可能性が見えてくる。少なくとも、仕入れ先に迷惑は掛からないし、社員の生活の保証もできる。オーナー社長も自己破産しなくても良いだろう。

冷静に考えれば、業績が悪化した企業を売却することは悪いことではない。むしろ、皆がハッピーになるはずだ。

3.企業建て直しの処方箋

企業を売却して、資本注入されれば、企業の建て直しの可能性が出てくる。少なくとも、現状より悪くならないだろう。

第一に行うべきは、新時代に対応できる経営者に交代することだ。旧来の商慣習や業界の常識にとらわれず、普通の企業として全うなマネジメントができればいい。異業種の人材でも良いと思う。最近では、経営者専門の
リクルートサービスもあるらしいので、そういう人材を登用しても良いだろう。

トップが変わらない限り、会社は変わらないし、そもそも、旧来の経営者には責任があるのだから交代すべきだ。

第二は、不良在庫の処分である。資本注入がされれば、在庫評価を落とすことができる。その上で、いくらかでも値がつけば、それが利益になる。

在庫を抱えていると、何もできない。過去を清算し、新しい体制で出直すためにも、最初に在庫を処分しなければならない。

第三に行うべきは、早期退職を含む人材ミスマッチの解消である。人間は変化を嫌うものである。変化を嫌う人が抵抗勢力となり、企業再生を阻害することが多いのだ。

また、新たな事業戦略を推進するには新たな人材を登用する必要がある。その人材コストを確保するためにも、新たな事業に対応できない人材は,他の企業に移ってもらうことが必要になる。

もちろん、新しい事業に対して、必要な人材とそうでない人材を見極める必要がある。

第四の改善は、継ぎ接ぎだらけのシステムの全体最適化である。

業績の悪い企業の業務システムの多くは、時代遅れであり、バラバラな時期に、個々の担当者がシステムを導入しているために、全体がつながっていない。そのため、様々な段階で無駄な作業が発生している。

そこで、システム全体を見直し、全体最適化を図る必要がある。クラウド化が一つの方向性になるだろう。

第五は、組織改革とモチベーションアップである。

企業買収は、社員にとっても大きなショックだろう。不安ばかりが先行し、悲観論が横行すれば、経営再建はできない。

企業のビジョンやミッションを明確に設定し、それを共有すること。そして、評価と報酬システムを改善し、社員のモチベーションアップを図らなければならない。

継続的なワークショップ等により、社員の不安を取り除き、新たなチーム編成を行う必要がある。

第六は、ブランディングと商品開発の強化だ。経営改善というと、いきなり新ブランドを展開しようという人も多いが、私は反対だ。

現在の商品にも、それなりの販売経路が確保されているし、顧客も存在している。それを無視して、全く新しいラインに変えても、そこにも競合は多い。

既存のブランドや商品の分析を終えてから、現状の改善を行わなければならない。

もちろん、必要であれば、新ブランド開発も行うが、その場合は、一からチーム作りをしなければならないし、仕入れ先や販売先も一からスタートとなる。

それよりは、既存ブランドのリニューアルを優先すべきだろう。

第七は、新たな人材導入と新たなサプライチェーン構築である。これは、全く新しいブランドや事業部を立ち上げることを想定するものだ。

新たな事業部をスタートさせる場合は、M&Aも視野に入れたい。社内で一からプロジェクトを立ち上げるケースと比較して、方法を考えるべきだろう。

第八は、本社移転を含む経費削減である。新会社のビジョンやミッションを理解し、経営的な視点に立てるようになってから、本社移転を考えるべきだろう。本社が自社物件ならば売却して、よりコストが下がることを前提に、賃貸物件への移転を考えたい。無駄なコストを削減し、有望な新規事業に投資することは経営改善の基本である。

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