ヒントは鳥居。日本が世界に誇る「絶対ゆるまないネジ」誕生秘話

jog20170724
 

神社の鳥居からヒントを得て開発され、スカイツリー、新幹線、そして各国の高速鉄道にも採用されている、絶対にゆるまないネジ「ハードロック」。純国産にこだわり、今や全世界に受け入れられるまでになった「革命的なネジ」ですが、そこに至るまでには苦難の道のりがありました。今回の無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』では、感動的ですらあるそのストーリーが紹介されています。

「絶対にゆるまないネジ」はいかに生まれたか

高さ世界一の電波塔「スカイツリー」。高さ634メートルは「武蔵の国」のムサシの語呂合わせだという。その最先端の技術の中に「和の伝統がちりばめられている。中心に直径8メートルの「心柱(しんばしら)」が建ち、地震の揺れを低減する構造は、法隆寺の五重塔などと同じだ。

地表部分の断面は三角形だが、上に行くにしたがって徐々に円形になっていくので、側面は場所によって、反っている部分と、ふくらんでいる部分が見える。反りは日本刀の刀身の美しさである。ふくらみは、古い神社仏閣の柱で「起(むく)り」と呼ばれる、少し膨らませて柔らかな印象を与えるデザインである。

もう一つ、使われているのが「絶対にゆるまないネジ」。東大阪市の中小企業・ハードロック工業株式会社の社長・若林克彦さんが、神社の鳥居で見たクサビからヒントを得て開発した商品である。

ネジは、ねじ込まれたボルトが元に戻ろうする力で、かならず緩むものである。そのために定期的に点検し、「増し締め」しなければならない。高い鉄塔での増し締めは危険だが、それを怠るとネジが緩んで倒壊の危険を招く。

そんな場所では「絶対にゆるまないネジ」は貴重である。「絶対にゆるまないネジ」は、瀬戸大橋や新幹線原子力発電所などで広く使われている日本の誇る技術である。

ハードロック工業は、東大阪にある従業員70名弱の典型的な中小企業だ。ネジという極めて成熟度の高い業界で、しかも100%国内生産を貫いている。通常なら、こういう企業は安価な中国製品に圧倒されて廃業するか、あるいは生産を中国に移すしかない。いずれにせよ人件費の高い国内生産は維持できない。

しかしハードロック工業のネジは、他社が真似できないので価格競争とは無縁だ。昭和49(1974)年の創業以来、一度も赤字を出したことがない。この「絶対にゆるまないネジ」がどのように誕生したのか、その軌跡を辿ってみよう。

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