「稲田切り」だけでは済まぬ。改めて露呈した安倍官邸の隠蔽体質

 

3月15日にNHKがこれに関連する以下の報道をした。

南スーダンで大規模な武力衝突が起きた際のPKO部隊の日報について、防衛省は、陸上自衛隊が破棄し、その後、別の部署で見つかったと説明していますが、実際には陸上自衛隊が日報のデータを一貫して保管していたことが複数の防衛省幹部への取材でわかりました。

防衛官僚の反乱ともいわれるリークが始まったのだ。

3月16日の衆院安全保障委員会で、今井雅人議員(民進)は「稲田大臣はこれまでずっと、自分が指揮して、日報がないか調査しろ、調査しろと言ってきたと豪語されておられました。こういう事実は報告されなかったんですか」と質問した。

稲田大臣は一瞬言葉に詰まりながら答えた。「報告されなかったところでございます」。実に奇妙な言葉づかい。歯切れの悪さは隠しようがない。

7月19日には、稲田大臣が2月13日と同15日の2回にわたり、陸上自衛隊から、電子データを保管していたと報告を受けていたことが報じられた。

「今さら陸自にあったとは言えない」という判断を稲田大臣は了承し、その事実は伏せられた。今井議員への答弁は虚偽であった疑いが濃いということだ。

特別監察の報告書では、情報隠ぺいへの稲田大臣の関与について言及されているかどうかが注目された。2月15日について次のような記述がある。

平成29年2月15日の事務次官室での打合せ後に、事務次官、陸幕長、大臣官房長、統幕総括官が、防衛大臣に対し、陸自における日報の情報公開業務の流れ等について説明した際に、陸自における日報データの存在について何らかの発言があった可能性は否定できないものの、陸自における日報データの存在を示す書面を用いた報告がなされた事実や、非公表の了承を求める報告がなされた事実はなかった。また、防衛大臣により公表の是非に関する何らかの方針の決定や了承がなされた事実もなかった。

日報データが陸自に存在すると稲田大臣に口頭で報告された可能性は否定できないが、書面での報告ではなかったというのである。

これについて弁護士 で元自民党衆院議員、早川忠孝氏は自身のブログにこう書いている。

稲田さんがどんなに否定しても、陸上自衛隊が日報を保管していたことの報告は大臣にまで上がっていたことは確実で、ただそれが書面での報告ではなかった、というだけの話である。書面が残っていない場合は、聞かなかったことにする、という扱いにすることはしばしばあることで、稲田さんは如何にも弁護士らしい対処をしたということだろう。

弁護士で政務官をつとめたこともある早川氏だけに、「聞かなかったことにする」というテクニックの開陳には一定の説得力がある。

しかし、こうしたテクニックが「責任逃れ」に使われやすいのも確かだ。稲田氏の一連の発言からはそういうところも感じられる。

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