「稲田切り」だけでは済まぬ。改めて露呈した安倍官邸の隠蔽体質

 

この日報が世に知れるきっかけをつくったのは、ジャーナリスト、布施祐仁氏だった。昨年10月3日、布施氏は7月7日~12日の日報を開示するよう防衛省に請求した。

しかし12月2日、防衛省から布施氏に届いたのは「不開示決定通知書」だった。

本件開示請求に係る行政文書について存否を確認した結果、既に廃棄しており、保有していなかったことから、文書不存在につき不開示としました

特別防衛監察の報告書によると、陸自の中央即応集団司令部が日報の開示に難色を示し、陸上幕僚監部から統合幕僚監部に不開示とする意見を上申、統幕は「意見なし」と回答し、不開示が決まったという。

文書が廃棄されて存在しないというのはもちろんウソである。「情報公開法違反につながり、自衛隊法違反に該当し、不適切」と 特別防衛監察の 報告書は指摘している。

PKO部隊の教育や指揮を行う中央即応集団司令部が何を気にしていたかというと、11月15日の閣議決定であろう。南スーダンに派遣する自衛隊の部隊に駆け付け警護の新任務を付与するというのが決定の内容だ。

11月30日には新任務を帯びた第11次隊が青森から出国することになっており、その前にジュバにおける「戦闘」の記された日報がマスコミに流れることを避けたいと考えたに違いない。もし情報を開示して、南スーダンへのPKO派遣が政治問題化すれば、安倍官邸からきつく叱られるのは確実だ。

12月2日の不開示までの経緯を稲田防衛相は知らなかったことになっているが、きわめて政治的な判断を迫られる問題を大臣に報告しないということがありうるだろうか。

その後、日報は奇妙な経過をたどって、陸自ではなく、統幕から開示されることになった。昨年12月10日、布施氏の以下のツイートをきっかけに、一転して日報開示への動きがはじまる。

今年7月に南スーダンのジュバで大規模戦闘が勃発した時の自衛隊の状況を知りたくて、当時の業務日誌を情報公開請求したら、すでに廃棄したから不存在だって…。まだ半年も経っていないのに。これ、公文書の扱い方あんまりだよ。検証できないじゃん。

このツイートが拡散され、ネット上で防衛省の対応に批判の声が湧き上がった。
12月12日に、自民党行政改革本部の河野太郎議員が、不開示の理由を説明するよう防衛省に要求すると、にわかに防衛省は慌てはじめた。

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