「聞いていない」「知らなかった」と、大臣としての責任を棚に上げ、「特別防衛監察で調べる」と、部下の責任を追及する。黒江事務次官と岡部俊哉陸上幕僚長を引責辞任させ、自らは「世間をお騒がせしていることについて、管理・監督者としての責任は免れない」との理由をあげて辞任した。
いちおう責任をとった形だが、あくまで「管理・監督者として」である。情報隠しについては、陸自のトップなり実務の統括者である事務次官に責任があるというスタンスだ。
週刊文春8月3日号「防衛官僚覆面座談会」で防衛官僚たちが稲田氏について語っている。
官僚A:ごく近い側近の言う事しか聞かない感じはある。大臣レクも「少人数で来い」と言うのは人見知りな性格の現れ。そのレクでも、防衛実務小六法を秘書官に携帯させ、「法的根拠は何?」と細かく聞いてくるから、民事裁判の事前打ち合わせみたいな空気でゲンナリ。そりゃ徐々にモノも言えなくなるわな。
官僚B:防衛省が他の役所と違うのは、行政組織の「防衛省」に加え、運用組織の「自衛隊」の長でもあること。部下を信頼しないといけないし、物の言い方も含め、人の痛みをもう少し感じながら職務をこなす配慮がほしかった。
防衛大臣を辞任したにもかかわらず、稲田氏は解放された気分になっているかもしれない。 辞任直後の感想を記者に問われ、「空です」と答えたが、政治的野心を捨てた心境に達しているのだとしたら、一人の人間としてはある種の進歩だろう。
ただし責任は最後まで、まっとうしてもらわねばならない。大臣を辞めたからといって、免れるものではない。
特別防衛監察をめぐる閉会中審査への出席を野党から求められているのに、もはや大臣ではないという理由で、これを拒否するのは、政治家のとるべき姿勢ではない。
疑惑の解明からとことん逃れ、ひたすらほとぼりがさめるのを待つという安倍政権流の危機回避法は、もはや通用しないのではないか。
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