そこで問題となってくるのが先述した192億円という建設費だ。先進的な設備にコストが高くつくのは当然で、構想にふさわしい施設を建設するなら、そのくらいかかるだろう。
だが、設計図面を見る限りでは、ごく普通の仕様である。建築エコノミスト・森山高至氏も「鉄骨造で、壁は6cmの成形コンクリート版、床は配線・配管などの底上げなしのコンクリート打ち、室内壁・天井は石膏ボードにビニルクロス、何一つ高いものはなく倉庫に毛が生えたような建築仕様」(黒川氏のサイトより)と指摘する。
「建築コストをケチって普通の住宅やオフィス程度に作っていることがバレバレである。そうすればお金が余って着服することもできる」と言う黒川氏の憤りも、あながち大げさとはいえないかもしれない。
加計学園の加計孝太郎理事長はメディアから逃げ回らず、記者会見なりして獣医学部新設の理念を自ら語ったらどうか。
四国に獣医学部がなく、感染症の水際対策にあたる公務員獣医師が不足していることを問題視するのであれば、愛媛県、今治市と連携し、学生が公務員獣医師として地域にとどまる仕組みを考えるべきだ。
全体数としては足りている獣医師が偏在し、公務員獣医師の不足が深刻なのは確かである。そこを埋める意志が具体化された計画なら、国家戦略特区の特例的学部新設として意味があるだろう。
既設の獣医学部にはできない教育研究機関になると信じられる判断材料はいまのところ皆無だ。しかも、やり方があまりに姑息なのではないか。
姑息といえば、「一点の曇りもないの大嘘。今度は政府公開の『議事要旨』に疑惑」で取り上げた国家戦略特区ワーキンググループの議事要旨改ざん問題に関し、内閣府と八田座長のとった対応策にも、呆れてしまう。
民進党の疑惑調査チームから議事要旨ではなく、議事録そのものを出すよう要求され、「それなら」とばかりに、議事録をサイトにアップしたのはいいのだが、これが姑息というか、なんとも人を食った内容なのだ。
まずは、おさらいをしておこう。
2015年6月5日の愛媛県、今治市に対する獣医学部新設計画のヒアリング。「議事要旨」の冒頭に、次のようなやりとりが記されている。
藤原(内閣府地方創生推進室)次長「資料その他、議事内容は公開の扱いでよろしゅうございますでしょうか」
山下(愛媛県)地域振興局長「はい」
実はこの時、愛媛県の地域振興局長は「非公開」を希望していた。「議事録」とは別に、「議事要旨」を作成した今春になって初めて愛媛県と今治市は公表を了承したのだ。
つまり、「はい」と言ったのは2年後のことである。なのに、それをヒアリング当日のこととして議事要旨に書き込んだ。
しかもこの議事要旨には、出席していたはずの加計学園幹部の名と、彼らの発言、説明内容は全て削除されている。明らかに「加計隠し」だ。