中国では結婚できない男性が3400万人。一人っ子政策の深刻なツケ

 

「光棍海外移民論」や「戦争による光棍危機解消論」の恐ろしさ

このような状況に対し、今の中国では、マスコミや政府関係においては「光棍危機」という言葉が生まれてきて流行っている。つまり、「光棍問題」をそのまま放棄しておけば、それが農村社会の乱れや犯罪多発を招くだけでなく、場合によってそれが誘因の人となって反政府の大騒乱や大暴動を引き起こし、中国共産党政権を窮地に追い込んでしまう危険性もあるからである。

問題は、この危機をどう解消するかであるが、中国政府にしてもなかなか妙手がないのは実情である。というのも、男女人口比率のバランスがすでに崩れた中で、3400万人と言われる「光棍」たちの結婚相手は国内ではそもそもいないから、どんな政策手段を講じていても、彼らに結婚させることは物理的に不可能なのである。

その中で、例えば浙江財経学院の謝作詩教授は、「光棍危機」解消のためには、「貧困層の人々は数人で一人の嫁を共有すれば良い」という吃驚仰天の「解決策」を提言して全国からの批判を浴びることとなったが、このような荒唐無稽な「解決策」が大学の教授によって堂々と提言されたこと自体はむしろ、中国が「光棍危機」への対策に行き詰まっていることの証拠であろう。

そうすると今度、一部の学者やネット民からは、移民政策を進めることによってこの3400万人の男たちの結婚問題の解決を海外で活路を見いだすべきとの意見が数多く上がってきている。端的にいえば要するに、中国国内で結婚できない男たちの大軍を海外へ行かせて嫁を探させよう、という発想であるが、それでは周辺の国々の若い女性たちはまるで、中国人自身の引き起こした「光棍危機」を解決するための道具となっているかのようなものである。

しかも、中国国内で「光棍」となっているのは農村部の貧困層が多いことは前述のとおりであるが、貧困層の彼らは外国に移民したとしても、一体どうやって現地の女性たちを引き寄せて自分の嫁にすることができるのか。「光棍」の海外移民が実現でもされていれば、それが結局、犯罪の蔓延や暴動の多発などの中国の国内問題をそのまま外国に輸出」してしまうこととなろう。

もちろん中国周辺の各国政府もそれを知っているから、そう簡単に中国からの「光棍移民」を許すような愚を犯さないであろう。(つづく)

image by: GuoZhongHua / Shutterstock.com

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