衆院解散では済まない。新たな録音データが明かす森友疑惑の真実

 

この会合に至るまでの経過を整理しておこう。2015年7月から12月にかけて、地下埋設物の撤去工事が行われ、同年9月4日に中道組、近畿財務局、キアラ設計、大阪航空局が打ち合わせをした。

そのさい、廃棄物をすべて用地の外に搬出すれば地価を上回る費用がかかる恐れがあることが問題となったため、建設工事に支障のあるコンクリートや土管などは撤去するが、それ以外の廃棄物は埋め戻して「場内処分」にすると決まった。

その費用1億3176万円は、着工を急ぐ森友学園が立て替え払いし、あとで国が同額を返還するという約束が取り交わされた。

この四者会合翌日の2015年9月5日、安倍昭恵夫人が新設小学校の名誉校長に就任。それ以降、籠池氏は俄然、強気になる。

「校舎の杭打ち工事中に新たな地下埋設物が見つかった」として、金銭面でのさらなる負担減を求めるための行動をはじめたわけだが、新たなゴミが出てきたのではなく、埋め戻したゴミの問題を交渉のネタにしたのである。

財務省理財局に田村室長を訪ねたさい、真っ先に口をついて出た以下の発言がそれを物語っている。

「今回お邪魔した主たる目的は何かというと、近畿財務局の方が、ガラとか、有害物質が入っている土を運ばないで場内に埋め戻してほしいなんていうようなことが発生したわけです」

この財務省訪問を契機に近畿財務局の態度が大きく変わったことは間違いない。

「総理案件」としてこの件を重視した本省からの指示があったからだろう。

値引きの根拠や資料を求める野党の追及に、佐川理財局長(当時)は「関係する書類は全て廃棄した」「パソコンのデータも消去されて復元できない」などと、まともに答弁することを一貫して拒否する姿勢をとり続けた。

「真摯に説明責任を果たす」と約束した6月19日の首相会見とは裏腹に、野党の臨時国会開会要求に自民党はなかなか応じず、ようやく9月28日開会と決まったとたん、冒頭解散するとの報道である。

「権力の私物化」が疑われる森友・加計問題を帳消しにするため、解散総選挙で一定の当選者数を確保し「禊(みそぎ)は済ませた」と開き直るのが安倍首相の腹の内に違いない。

メディアではしばしば、野党がだらしないから自民批判票の行き場がないとコメントされる。しかし、離党ドミノで民進党が存立の危機にあるからこそ、共産党との選挙協力を含む野党共闘が実現する可能性はむしろ高まった。

専横ぶりが目に余る今の政権ではだめだと思うなら、野党統一候補に票を投じるため投票所に足を運ぶのも一つの方法だ。「禊は済ませた」と言わせないためには、ぼやいてばかりいても仕方がない。

image by: Shutterstock

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