浮気妻が「DVでっちあげ離婚」。本物の探偵が事件現場を生レポート

 

失踪した妻の不貞

今度のクライアント(依頼者)は、男性であった。男性の奥さんが子どもを連れ、居なくなったという事案で、奥さんの所在がわからないというものであった。

自宅の荷物はほとんど運ばれてしまい、残ったのは業務用の冷蔵庫と、ワイヤーキーで施錠されたパソコン一式、男性の衣類程度であった。

信頼できる筋からの紹介ではあったが、調査を行う場合は独自に審査をして、暴力夫などではないことが絶対条件となる調査であった。

下山と秋川は、パソコンに残っているデータの解析から、浮かび上がる住所を1つ1つ調べていくという機動調査員として動くことになった。

阿部は、情報分析を調査員に任せながらも、このクライアントの勤める会社そばまで行き、夕方、喫茶店で彼の話を聞いていた。

阿部「そうなると、家出前日も当日の朝も普通に会話していたんですね」

男性「そうです。いつもと変わらないというか、そういう」

阿部「よく話題に出ていた人物って、息子さんのサッカーのコーチ?」

男性「ええ、一緒に食事したこともあります」

阿部「そのコーチ、息子さんは何か言ってましたか?」

男性「いや、普通ですよ。サッカーのことだけで」

阿部「そうですか」

男性「そういえば、息子は、妻の行動に不満をこぼしてました。いつもスマホばかり見ていて、スマホも頻繁に鳴るって。」

阿部「そのコーチの住所ってわかりますか?」

男性「いや、住所までは…練習の日とか場所はわかりますが」

阿部はすぐに事務所に連絡し、コーチの氏名の特定を中心に情報を集めるように指示した。事務所に戻る頃には、所在を確認する調査を実施できるだけの情報が完了済みとなっていた。

阿部「下山に連絡して、明日、この公園グランドから、尾行するように伝えてくれ」

コーチはグランドに大きなワゴン車で来ていた。このワゴン車に児童らを乗せ、保護者も乗せて、送り迎えもしているようあった。

コマさん「安全運転だし、尾行は難しくないな」(業界屈指の実力を持つ調査員、元下山の上司)

下山「帰宅しないようですね」

コマさん「ん? そうだね、ナンバーの域から外れているもんな」

車のナンバーには地域名が表示されるが、この管轄から外れた方向に車は移動していた。リアウィンドウに貼られた駐車場保管のシールの管轄からも外れていた。

ワゴン車は、郊外型のファミリーレストランの駐車場に滑り込んだ。しばらく後から、下山とコマさんが乗る車もその駐車場に入った。

ファミレス内は外からもよく見えるから、駐車場に入ったところで、下山もコマさんも、そこに調査対象者になっている母子がいるのが、確認できた。

“ビンゴ!後は追うだけ!!”

そう思い、駐車場で待機しようとしていると、阿部からファミレス内での様子の撮影と、会話を聞いてこいという指令が入った。

男がステーキ系のセットを注文したを確認して、下山とコマさんは、カレーライスを頼んだ。カレーは作り置きがほとんどであり、レトルトも数分で出来上がる。

肉を焼くステーキより、注文から食べるまでの所要時間は早いはずだ。

奥さん「ちょっと、◯◯、ジュース取ってきなさいよ。ママは紅茶ね、ちゃんとティバックは捨ててきて」

息子さん「・・・・」

息子が席を立つと、奥さんはコーチに慣れた口調で話しかけた。

奥さん「ちゃんと責任とってよね」

コーチ「でも、出て来ちゃうと不味くないの? 浮気がバレたら離婚できないって言うし」

奥さん「それはバレないから。暴力うけてたって言えば、ほとんど通るって教えてもらったから」

コーチ「・・・」

食事が終わるとコーチは母子を車に乗せて、築浅のアパートへ送り届けた。

下山「コーポ・ヤ◯イって、コーチの名前と同じですね」

コマさん「明日所有関係をしらべようか、親の持ち物かもしれないな」

下山「それにしてもオッカナイですね」

コマさん「あの奥さんの話なら、DV被害は痴漢冤罪みたいなもんもあるってことだよな」

下山「計画的でしたもんね。夫の暴力を受けていて、見かねたコーチが色々お世話を焼いてくれた。ってシナリオまであって」

コマさん「でも、あの息子、全部知ってるぜ。睨んでたもん」

母子がいる築浅のアパートは、コーチの父親の持ち物で、この父親は付近の土地を数多く持ち、不動産オーナーで生計を立てている資産家であることが判明した。

女性調査員きく子の調べによれば、ママ友間でもすでにコーチとできているんじゃないかという噂は知られており、ママ友の中で裁判所を騙して上手に離婚した人物が、入れ知恵をしていることも判明した。

下山「あのコーチは、清掃のボランティアとサッカーコーチだけしかやってませんよ。収入は親からのお手当ですね」

コマさん「奥さんの方は、息子が学校行っている間、コーチの家に通ってますね」

サザビー「依頼者には、弁護士から通知書が来たようだ。そこには、日々の度重なる暴力と暴言、ドメスティックバイオレンスが離婚の原因だから、慰謝料として家を寄越せって、残ったローンと息子の養育費は支払えってことだ」

ゲンさん「息子さんは浮かない顔してるよ。イライラしているようだし」

阿部「もう11歳か?◯◯太くんは?」

サザビー「息子はそうだな、11歳だ」

阿部「それなら、親権どうのっていうのは、息子の希望も聞くわけだ」

阿部「俺からは、パソコンな。あれは夫婦共用だったんだが、奥さんが実はほとんど使ってた。主に写真の取り込みとか年賀状なんかに。で、中を見たら、データ削除のソフトで消していたんだ。それを、復活させた」

会議室のモニターには、まず、夫婦が仲睦まじくして、息子が笑顔の写真が何枚も写し出されていた。

阿部「近所の証言もあるから、DVは偽証ということになるな」

次に、モニターに映し出されたのは、前年の夏にあったサッカー合宿の写真であった。

阿部「衝撃的な動画だよな」

そこには、合宿所になったホテルの近くにあった縁結びの神社で、奥さんとコーチが書いた絵馬を結んでいるシーンであった。

サザビー「おいおい、ずいぶん追い込んだな」

阿部「まだ、ある」

次に映し出されたのは、奥さんのネイルと指輪とコーチのFacebookに投稿された写真に出てくる女性の手の比較表であった。

阿部「日中にホテルでランチして、デイユースしてやがったよ」

下山「チェックインメイトですね」

サザビー「チェックメイトだよ」

阿部「不貞(浮気)は立証できたと言えるだろうが、それと親としての権利は関係ないっていうのが、この世界の常識だろ」

サザビー「現に息子は母親と暮らしている。不利だな」

阿部「息子には酷かもしれないけどな、事実を知ることは大事だ」

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