遺族年金で「18億円の過払い」が判明。なぜ、払い過ぎは起きたか

 

さて、遺族年金を失権する場合の例を見てみましょう。

1.昭和50年5月20日生まれの女性(今は42歳)

10歳の子が1人(2級相当の障害あり)。3年前に夫が死亡し、現在は遺族厚生年金50万円と遺族基礎年金779,300円+子の加算1人分224,300円の1,503,600円(月額125,300円)受給中。この10歳の子にも遺族年金貰う権利はあるが、死亡者の配偶者であった妻が貰える場合は子の遺族年金は停止する。で、平成29年11月22日に再婚した(婚姻届も出す)。

となると、11月分をもって妻の遺族年金は消滅して、12月15日に250,600円(125,300円×前2ヶ月分)の振り込みが最後となる。消滅事由が発生した月の翌月から年金は無くなるので、11月分までは支払われる。妻の遺族年金が消滅しましたが、この場合は年金が停止されていた10歳の子の遺族厚生年金と遺族基礎年金が停止解除になる。つまり、妻の遺族年金が消滅した後は子が貰う事になる。子は遺族厚生年金50万円と遺族基礎年金779,300円の1,279,300円(月額106,60円)を受給する事になる。ただし、この子は生計を同じくする親が居るので遺族基礎年金は停止されてしまうため、遺族厚生年金50万円のみの支給となる。遺族厚生年金は一緒に住んでる親が居るから停止するという事は無い

さて、再婚したわけですが、この度再婚した夫と妻の子が養子縁組する事になりました。この子の遺族年金はどうなるのか? この場合の夫とは正式な婚姻によるため直系姻族にあたる人との養子縁組なので、子の遺族年金は消滅しません。これが仮に事実婚による夫であれば、その夫は直系姻族「以外」の者との養子縁組となるので、その時は子の遺族年金が消滅する。

また、この子は2級相当の障害があるので、18歳年度末までに障害状態を確認するための診断書を年金事務所に提出する事により遺族年金の支給を20歳になるまで延長してもらえる。余談ですが、この子が20歳以降も障害状態2級以上が続くのであれば、20歳以降は障害基礎年金を請求して保障を受けるという流れになる。

20歳前からの障害は、普通の障害年金と異なり過去の年金保険料納付状況は問われない。ただし、保険料を納めずに貰える障害年金になるため所得制限やその他一定の制限がある。障害基礎年金2級は年額779,300円で、1級は1.25倍の974,125円となる(平成29年度価額)。

というわけで、遺族年金を受給されている方は再婚とか養子縁組という話になった時はよーく気にしておいてくださいね~。

※追記

姓を旧姓に戻す復氏や、死亡者の姻族との扶養義務関係を終了させる姻族関係終了届を出しても遺族年金は消滅しない

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