「驚き」がないiPhone Xをバカ売れさせた、アップルの巧みな戦略

 

数々の新機能を搭載し、11月3日の発売以来話題を独占しているiPhone X。今回のメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』では著者でMBAホルダーの理央さんが、9月にiPhone8を出したばかりという状況の中、これまでよりも高い価格帯のXをまさに「矢継ぎ早」に発表したアップルの戦略をMBAの視線で詳細に分析しています。

iPhone Xの基本マーケティング戦略

好調アップルとiPhone X

「満を持して」という感じで、11月3日にアップルがiPhoneの最上位機種として、iPhone Xを発売しました。初代のiPhoneからちょうど10年。思えば、Web2.0の時代とともにiPhoneは歩んできたのです。

発売から初期の報道を見ていると、多くのニュースで取り上げられ、新製品をすぐに購入する私の周りの「イノベータ─」たちもさっそく購入し、SNSにアップをし始めています。

感覚的にはiPhone8の時よりも、話題性も売れ行きもかなりいい」という印象です。11月4日付の日本経済新聞には、

アップル表参道は、3日午前8時、カウントダウンならぬ、カウントアップで開店しました。予約者や順番待ちの購入希望者は同時刻で約550人と、iPhone8発売時の9倍の行列。

予約できず、近くにホテルをとって6日間並んだ。

といったように、人気も再加熱の様相を示しています。

7~9月期も過去最高の売上を記録しているアップルは、iPhone Xの発売もあり、10~12月期の売上で対前年同期比で7%増と、好調を維持しています。

iPhone Xの「何を、誰に、どうやって」

誰に~STP分析

iPhoneのターゲット層は幅広い。一方で、iPhone Xはどうだろうか。

これまでより高い価格帯、顔認証や、ホームボタンのないデザインなどの新機能など、これまでのiPhoneとは違うプロダクトだ。しかもiPhone8を出したばかりである。ということを考慮に入れた上で、iPhone Xがターゲットとしていそうな初期の顧客層を、以下の4つのカテゴリーとそのセグメントで推察してみる。

1.セグメンテーションSegmentation

まず、デモグラフィック=属性)から。年代は20代~40代前半、性別は、男性中心、職業は、広告代理店勤務、IT関係、フリーランス、など、ジオグラフィック(=地域特性)は、都心在住または勤務。

そして、消費者インサイト=特性や心理的要素)で、サイコグラフィック(=価値観や心理)では、好きなものには価格が高くても投資をするアップルファン、ビヘイビア(=行動特性)では、新しい場所や流行りの店に行く人、SNSなどにも精通、自分の世界を持つ、といった具合です。

2.ターゲティングTargeting

この4項目を合体させ、見えてくる主要ターゲット像は、常に新しい話題を求め、自分で情報も発信する一方で、自分の趣味や行動にこだわりを持つ、都心に住む20~40歳代の男性で、ITやデザインに従事。と、想定顧客層を塊にします。

大企業の場合は、第1優先ターゲット層、第2優先ターゲット層、といった具合に、複数設定することが大半です。

3.ポジショニングPositioning

次に顧客価値を考えた上で、競合ブランドと比較し、市場での相対的な立ち位置を決めていきます。ライバルは、他社のスマホに、SIMフリーなどの格安スマホ、もちろん、これまでのiPhoneも考慮に入れていきます。

iPhoneXの場合は、新機能が市場でも希少性が高いため十分差別化ができる、という判断をしているようで、TVCMなどでのコミュニケーションを見ても、他社製品や旧iPhoneとの比較ではなく、新機能の製品属性が顧客価値である、という判断で、市場の優位性を取れる、と踏んでいるようです。

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