炎上の「素手でトイレ掃除研修」では絶対に磨けぬホンモノの人材

 

では、この「トイレ掃除研修」は、そのような「上司に耳の痛い意見を言えるような強い心、逃げない心」を鍛える、ホンモノの人材育成になるのかというと、違うと思います。そうではなくて、逆なのです。

常識的な感覚として「トイレ掃除を強制するような経営陣は「部下から見て、ネガティブ情報を上げやすい」というイメージになるのかというと、正反対だからです。

この石渡氏の名誉のために言えば、この経営者は「自分はやらないくせに」部下には「汚い作業を強制」するようなタイプではないようです。ですから、道徳的に非道だという非難は当たらないかもしれません。ですが、自分から率先垂範しているということは、その分だけ部下に対する強制力は増えている、そうした反省が必要と思います。

その強制力を持ったカルチャーというのは、「ネガティブ情報を上げやすい」つまり「情報流通の風通しの良いカルチャーにはなりませんむしろ反対のムードを蔓延させるのだと思います。これは、万が一の場合には経営の命取りになります。

会社というのは、まず経営者と従業員の利害は対立するものです。ですから、経営者は常に従業員の立場から、自分の言動を厳しく反省することが求められます。また、社会常識から考えて無理なことを従業員に強いてはなりません。そうした原理原則に忠実な会社が最終的には生き残るのです。

 

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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