【書評】志賀直哉も川端康成も「生まれ変わったらなりたい」職業

 

小説家は社会を相手に闘っているが、絵描きは宇宙を相手にしている、と大きく出たな、横尾。「そうそう、かなりアホな人間がやっている」「明日どうするつもり、と聞かれても答えようがない」「今でも絵描きが何かはよくわからない。これは職業だといっても、職業ではないし、道楽というにしては、どこか違う。何かいい言葉はないかなあ」と野見山、のんきでストレスはない

生まれ変わったら何の職業に就きたいか、というアンケートで志賀直哉、川端康成は絵描き、梅原龍三郎、安井曾太郎もなんと性懲りもなく絵描きだった。三島由紀夫は「絵画の力には敵わない。文学は無力だ」と言っている。横尾の考えでは、画家の長生きは「考えない」ということに結びついている、らしい。

この本は、横尾の足かけ3年(79歳~81歳)、その時々の素朴な好奇心から聞いた「創作のこと」「年を重ねること」「死のこと」が収録されている。ロングインタビューをまとめたものではない。なにしろ、聞くだけの人ではない。相手の話を奪うように話す。だから対談集である。なかなかいいリズムだが。

「年をとることで脳の支配から逃れた身体がかえって前面に出てきて、創作活動や芸術行為というものに純粋に取り組める。それがさらに寿命を延ばすことにもなる。年を取るということは、逆に少年に返っていくこと」そこが一番大事なところで、それこそ創造の根幹であり、核となるものだという。う~む、幼児性の源郷に帰ることが成熟だなんてトンデモ屁理屈だと思うが。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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