それだけあるなら、少し分けて
実際、ネットで「イラストをタダで描いて!」という人は、ピカソの話に出てくる女性と同じではないかな、と思います。生まれながら1億円を持っている人がいたら、「その中から1万円くらい、くれてもいいでしょ!?」と思うのと同じように。
「あなたは天賦の才能があるのだから、その中から、ちょっとだけタダでちょうだい!」みたいな気持ちなのではないでしょうか。それこそ「努力ではなく才能!」という思いこみや、また才能を持っていると考えている人への、ちょっとしたやっかみもあるのかもしれません。
何にせよ、このあたりの意識によって、その「イラストレーターさん、タダ問題」が生まれているように思えます。
すべて練習につながっていく
とはいえ、「だからイラストレーターさんにタダを要求するファンは間違ってる!」と言うつもりもありません。
そもそも「才能よりも継続の方がずっと重要」という事実をつきつけて「そうか! 自分が悪かった! じゃあ継続しよう!」なんてすぐに思考が変えられる人は少ないと思います。「お酒は健康に悪いからやめよう!」と言って、すぐにやめられる人が一握りなのと一緒です。
またイラストレーターさんも、自分から言わせれば、「そんなことをわざわざネットに書く時間があったら、その時間を少しでも絵を描いたり本業に当てたりするべき」です。そうすれば、1万時間どころかさらに時間は積み上がり、もっともっと上達していくはずです。
ピカソのエピソードだって、ピカソ自ら「女性ファンに100万ドル要求してやったなう。まったく一般人はそんなことも分からないんだからww」なんて話したわけではないでしょうし、そんなことを言ってたら、ピカソ先生とはいえ炎上必至です(当時SNSがあった前提で)。
おそらく周りの人が聞いたりして、脚色が加わったエピソードであり、実際、ハンカチを返さないとは思えないので、「冗談ですよ、はい」と言いながら渡したのではないかと考えられます。
個人的に思いますが、1万時間を経験したプロは、根本的に「人を喜ばせるのが好き」なもの。そのため、もし時間に余裕があるときにファンが希望してきたのなら、ちょっとした成果をプレゼントしてあげる人も多いかもしれません。結局それすらも「練習」につながるわけですから。