イラストレーターに「タダで絵を描いて」問題は、なぜNGなのか?

 

練習とモテ

学生時代、楽器に手を出す男子は多いものです。彼らの頭の中にあるのは、「ライブでキャーキャー言われてモテる自分」というイメージ。しかし実際、アーティストは「ライブでキャーキャー言われるだけ」ではありません。それは彼らのほんの1%程度の時間だけで、99%以上の時間、「自宅で地味に練習する」ことに当てられます。

実際、男子学生は、その時間で飽きます。疲れてやめます。「俺はモテたいから楽器をしているのに、こんな地味な練習イヤだ!」と思って、いつのまにか楽器はホコリをかぶることになります。

マンガ家や作家も同じです。「いつかマンガや本を出したい」と思う人は非常に多いですが、やはりプロになれる人はごくごくマレ。大半の人は、ちょっとだけ絵や文を書こうとして、「思ったほどうまく書けない」「意外に面倒で大変だ」と考えて挫折してしまいます。そしてプロを見て、「自分もあれだけの才能があれば、プロになれるのに…!」と考えます。

しかし、彼らは気づいていません。そのプロは、彼らが「面倒」と放り出した「地味な練習」を、ただただひたすら毎日やり続け…。それが1万時間に到達したからこそ、素晴らしい曲や絵や文を作り出せる、プロになれたのだと。

自分自身、今はマンガ原作や作家のお仕事をさせていただいてますが、確かにこの1万時間の法則、納得できる部分はあります。ハバはありますが、1日に1時間~10時間くらいはネタのことを考えたり、何かを書いたりしています。平均して、少なく見積もって5時間としても、一年で365をかけて1,800時間くらい。6年で1万時間に到達します。余裕です。実際その何倍か、とかは置いておいて、もう余裕で1万時間です。

才能のせいにしてしまう心理

何にせよ重要なのは「継続するということだけ。本当にそれだけです。しかし大半の人は、それが分かりません。

「全部、才能のせいだ!」
「彼らは天才だからだ!」

なぜそう思うのか? それはもちろん「そう思えば、自分が努力しないで済む言い訳ができるから」です。あの人は才能があって、自分はそれがない。生まれつきだ。しょうがないんだ。そう思って自分を慰めるのです。

さらに「継続できるのも才能だ」なんて言う人までいます。でもそれだって違います。継続できる人だって「気づくと簡単に継続できている」わけではありません。眠いとき、つらいとき、やめたくなるときだってあります。

それでもやってるんですよ。たとえばマンガ家だって、「シメキリ」があるから、必死に頑張っている部分はあります。同人誌だって印刷所のシメキリはありますし、たとえネットでイラストを発表してるだけの人も、「見てる人が楽しみにしてるだろうから」という理由で自分を鼓舞している部分はあります。それらの「他人の目」などを駆使して、やっと継続できていて…。その結果が1万時間につながっているだけです。

「才能だけで、勝手に自動運転で1万時間過ぎる」なんてことはありません。もちろん「向き、不向き」はあるかもしれません。それだったら、単に「自分が向いているものを見つけ直せばいいだけです。

しかしどんな方面に向かっても、最終的には「つらくても、飽きかけても、ただひたすら、継続する」ということは必要なのです。

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