世界的エンジニアが堀江貴文との対談で語りきれなかった未来の事

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先日、本サイトにて3回にわたって掲載した、ホリエモンこと堀江貴文さんとの対談が話題を呼んだ世界的エンジニアの中島聡さん。自身のメルマガ『週刊 Life is beautiful』にて、その対談で登場した自動運転や自動車社会の未来についてのアイデアについて、補足する話を掲載しています。中島さんが語る、今まで「そんなのSFの世界だ」と本気にされなかった自動運転の未来とは?

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2018年5月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール中島聡なかじまさとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

自動運転社会の一つの形

先月、ホリエモンとの対談の内容を特別号として配布しましたが、その中に出て来るアイデアについて、補足したいと思います。

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私自身が自動車業界で仕事をしていることもあり、「自動車業界に訪れている大変化」だとか「自動運転が実現された時の社会のあり方」などを常日頃から考えているし、メルマガなどを通じてもアウトプットしています。

そんな中で、明らかになってきたこともありますが(例えば、自動車メーカーが単なるメーカーのままでいたらコモディティ化されてしまう、など)、なかなかはっきりとした答えが見つからずに、モヤモヤとしているものもあります。

その中の一つが、「シェアリング・エコノミー」と「パーソナルな空間の両立」です。

人が自分の自家用車(ひと昔の言い方をすれば、マイカー)を持つ理由は色々ありますが、大きく分けると、

  1. 財産である
  2. ステータスシンボルである
  3. いつでも好きな時に使える
  4. パーソナルな空間を持てる

の4つになります。

一番目の「財産である」は、(車検代、保険料、駐車場代を含めると)今現在ですら怪しいものですが、自動運転+シェアリング・エコノミーの時代になると、全く意味が無くなります。稼働率が桁違いに高くなるため、シェアした方が圧倒的に安いからです。

二番目の「ステータスシンボル」は文化的なものなので、ある程度は残ると思いますが、最終的には「馬を持つことが出来るぐらい金持ちだ」のような象徴的でしかないものになると思います。

三番目の「いつでも好きな時に使える」は便利さの話ですが、既に(人間が運転する)Uberですら自家用車よりも多くのシナリオで便利なことが証明されているので、自動運転+クラウド配車の時代になれば、便利さでもシェアした方が上回ることは明らかです。

私がモヤモヤと悩んでいたのは、四番目の「パーソナルな空間」でした。自動運転車に一人で乗ればプライバシーの問題は解決出来るし、インフォテーメント(音楽やカーナビ)も技術でなんとか出来ますが、「不特定多数の人が座った汚れている可能性のあるシートに座らなければならない」という問題だけは解決しようがないので、答えを探していたのです。

それもあって、堀江さんが対談中に「でも、もし自動運転車が普及していけば、でっかいバスみたいなのを作って、今のお年寄りとか障害者の優先席みたいな場所を作って、ワイヤレス充電のスポットみたいにして、そこにガチャンとそのパーソナルモビリティが繋がるようにして……。」と言った途端に、私の脳の中でそれまでバラバラだったパズルが一気に組み合わさったような感覚があり、続く「ひょっとしたら、パーソナルモビリティが普及したら、バスの中には椅子は要らないですよね。みんなが持ってるわけだからね。」という私のセリフに繋がったのです。

堀江さんはとても頭の回転が良いので、すぐに私が言っていることを理解してくれて、そのまま話が発展しましたが、実はここで、上の「自動車のシェアリングにおけるパーソナル空間問題」を解決する大きなイノベーションのタネが生まれたと私は感じています。

分かりやすく言えば、堀江さんの頭の中には「電気自動車の充電問題は、電気自動車の『入れ子』で解決できる」というアイデアがあり、それが私の頭の中にあった「自動車のシェアリングにおけるパーソナル空間問題を解決したい」というモヤモヤ感と化学反応を起こして、「全員が(低速の)パーソナルモビリティで移動するようなり、そのままシェアリング自動車に乗り込めばパーソナル空間を提供できる」というイノベーションに結びついたのです。

ちなみに、ここで言うパーソナルモビリティとは、低速でしか移動できない軽量の電動車椅子のようなもので、Honda の Uni-cub やアイシンの ILY-A のようなものをイメージしてもらえば良いと思います(もちろん、もっと車椅子っぽいものでも結構だし、健康のために人力のものもあって良いと思います)。

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