タバコ、酒、砂糖にもっと課税すれば死亡率は下がるー現役医師が提言

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自分の意志だけではなかなかコントロールが難しい飲酒や喫煙。加えて現代人は糖分も摂り過ぎるきらいがあり、それらが引き起こすとされる生活習慣病は、実に死亡原因の70%にも上ります。そんな状況から人類を救うSTAX(Sugar Tobacco Alcohol Tax)を取り上げているのは、現役医師の徳田安春先生。先生は自身のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』で、この税制が全世界であげている死亡率低下の実績を紹介するとともに、一日でも早く各国が導入すべきと記しています。

STAX(Sugar Tobacco Alcohol Tax)は命を救う

現在、地球上の全ての人間の死亡原因の約70%は生活習慣病です。毎年、700万人以上の人々がタバコが原因となる病気で死亡しています。同じように、300万人以上の人々がアルコールが原因となる病気で亡くなっています。1970年代と比べて、2010年代では、世界中の子供たちの肥満者の割合が10倍以上に増えています。この間、砂糖の消費量が世界的に増えたことが大きく関係しています。最近1年間では、世界で少なくとも400万人以上の人々が肥満が原因となる病気で死んでいるのです。

そこで注目されているのがSTAX。人類を生活習慣病による死亡から救う最強のツールです。でも、これは薬でもなければ、医療機器でもありません。STAXはSugar Tobacco Alcohol Taxの略語であり、健康に有害なものにより多くの税金をかける政策介入です。すなわち、砂糖、タバコ、そしてアルコールに課税することが人々の命を救うのです。

実際に多くの国々で、政策介入による確実な効果が確認されています。砂糖税を導入したメキシコでは、最初の1年間で砂糖入りの清涼飲料水の消費量が5%下がりました。その次の1年間でさらに10%下がりました。1990年代に、たばこ税を大幅に増やした南アフリカでは、喫煙率が約40%も下がりました。逆に、2003年にアルコール税を減らしたフィンランドでは、アルコールに関連する死亡率が男性で約15%上がってしまい女性で約30%も増加しました。フィンランドでは、政策の失敗で多くの人が亡くなったのです。

STAX導入を妨げる産業構造

STAXほど有効な健康政策はありません。しかし、現実には世界の国々でこの政策をしっかりと導入しているのは少ないのが現状です。十分に高いレベルのたばこ税についてみてみると、人々のうち約10%程度でしかこの政策が実施されていません。日本のタバコの値段は欧米諸国と比べてかなり安いままです。日本のタバコは1箱約400円なのに対し、ドイツでは約600円、フランスでは約800円、イギリスでは約1,200円となっています。

健康政策の導入を妨げているのは産業界です。これまで、世界中のたばこ産業は、タバコの販売による経済効果を強調し、闇タバコの流通の恐れを誇大に宣伝していました。タバコ農家への保護の必要性も盾にしておりました。政治家に対するロビー活動は強力です。

一方で、タバコ産業は、タバコの有害性についての研究データを隠していました。アル・パチーノ主演の映画「インサイダー」では、たばこ産業の暗躍ぶりが描かれていました。アルコールや加工食品の産業も同様な行動をとっています。ウルグアイのモンテビデオで宣言されたWHO生活習慣病対策ロードマップの文言から、アルコールと砂糖税についての言葉が削除されたことは、その行動が成功してしまったことを物語っていました。しかし、世界中の政治家たちはこのことをだんだんと気づくようになったのです。

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