では、なぜこうした“オン・ザ・ライス”メニューが、ご当地B級グルメとして、地元の人びとに愛されているのでしょうか。その理由は、まず丼物との違いを考えればわかります。
丼物は、狭い空間に押し込められ、“小さな世界”をカタチづくっています。食べる時も丼の領空内で収まるように、注意しながら食べなければなりません。
その点、皿にのった“オン・ザ・ライス”の領空はかなり広いと言えます。ポロッと落としても、気遣いがいりません。のびのびと食べることができます。気を遣わない分、食べることに集中できます。
“集中”という点では、丼物もガツガツと集中できるのですが、“小さな世界”に浸っているせいか、一所懸命過ぎて、味を楽しむ余裕がありません。とにかくすばやく口に放り込むのです。
“オン・ザ・ライス”は、皿の風景を眺めながら、次はどこから食べようかと、迷う楽しみがあります。美味しさを一気に流し込むか、ひとつひとつの具材の味を噛み締めながら、ゆったりと味わうか、の違いがあります。あくまで私の主観なのですが、これが丼物と“オン・ザ・ライス”の違いだと考えています。どちらが良いとか悪いとかではありません。まったく好みの問題です。
で、どちらがB級グルメとして、“らしさ”を持っているでしょうか。丼物は、高度成長期の流れで、ササッと掻き込み、すばやく食べられることが前提で生まれたのではないでしょうか。忙しい日常の中で、食べることに時間を割いていられない人が食べるものなのです。つまり、現代社会においては、都会的な食べ物なのです。
“オン・ザ・ライス”は、皿にのっているので、必然的に急いで食べることができません。フォーク、ナイフ、スプーンなどを使うため、掻き込むこともできません。つまり、時間に余裕のある人でないと食べられないのです。ゆったりと時間の流れる地方向きだと言えます。なので、地方に“オン・ザ・ライス”メニューが多いのではないでしょうか。日常の食事をゆっくりと楽しみたいと願い、またそれが比較的許される地方に、“オン・ザ・ライス”が生まれたように思います。
都会の飲食店にも同様のメニューはあるでしょうが、地域全体に広がり、“B級グルメ”として認知されているものは少ないのでは。
まだまだ全国各地に、“オン・ザ・ライス”はあるでしょう。地元で愛されるご当地B級グルメをもっともっと掘り起こしてみれば、そこに繁盛メニューのヒントがあるのではないでしょうか。
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