部下や子供を叱る時、ついつい大声で怒鳴りつけてしまうもの。しかし、維新の胎動地となった萩で多くの人材を育てた吉田松陰はやはり一味違っていたようです。今回の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』では著者で現役教師でもある松尾英明さんが、教育の理想ともいえる本質が詰まったとある言葉を紹介しています。
「天真」を引き出す「蒲柳の質」
先日の研修旅行中、山口県の「鍵山記念館」というところで、読書会を行った。テキストは森信三著『修身教授録』の第19講「松陰先生の片鱗」である。この中で「天真」という言葉が出てきて、これが心に引っかかった。
意味を調べてみた。広辞苑によると
【天真】
天然自然なままで、偽りや飾り気のないさま。
とある。『修身教授録』の文中には次のように書かれている。
そして人間各自、その心の底には、それぞれ一箇の「天真」を宿していることが分かってくるのであります。
天真に二、三はなく、万人すべて等しいのでありますが、ただその本性の開発の程度いかんによって、そこにそれぞれ独自の趣を発揮してくるのであります。
それ故ひとたびこの点がはっきりしたならば、いかなる者にも穏やかに優しく、かつていねいに対せずにはいられなくなるはずです。
それぞれの「天真」を引き出す。それさえできれば、教育としては、成功であると思われる。それぞれ個別の教育が必要な所以である。
それぞれに「天真」があるという前提に立つ。さすれば、誰に対しても、ていねいに接せざるを得ないはずということ。立場自体は上であっても、相手を見下すということをしないということになる。
こう考えると、「叱る」ということのやり方自体を考える必要が出てくる。子どもと共に歩む者としては、叱る際に、自省の念が伴う必要がある。つまりは、大声で怒鳴るのではなく、自身にも諭すように、低く柔らかく、わかるように伝えるのが理想といえる。