しかし、返ってくる報告書のタイトルはマネジメント教育になっていた。「そうじゃない。私はリーダー教育のプログラムを作ろうと思っているのだ」と指摘しても、返ってきた報告書にはまたマネジメント教育と書かれていた。おそらく彼らは当初リーダーとマネージャーが同じものだと理解していたのだろう。
これは無理もない。普通の大企業でも管理職になったらマネジメント教育を受ける。そしてコンプライアンスの重要性、人事評価の方法、目標数値の設定の仕方などを学ぶ。それが一般的だから、リーダー教育というとマネジメント教育のことだと考えてしまったのだ。
準備室のメンバーは「大田さんの言っているリーダー教育を一般的にはマネジメント教育というのだけれど、たぶん大田さんは知らないのだな。京セラの人はマネジメント教育をリーダー教育と呼んでいるのだろう」と解釈したのかもしれない。
そこで私はリーダーとマネージャーの違いを繰り返し説明した。
「部下を管理するマネジメントについては、あなたたちはよくわかっているし、優秀かもしれない。しかし、今JALに必要なのは部下をまとめて同じ目標に向けて引っ張っていけるリーダーを育てることなんだ。優秀なマネージャーであれば、困難に遭遇すればその迂回策を考えるだろう。うまくいかなかったら、その言い訳を探して、責任逃れをするだろう。そんなマネージャーばかりだから倒産したんだ。再建を成功させるには、どんな困難にぶち当たってもあきらめずにやり遂げようとする、一つの目標に向かって部下を鼓舞してなんとかまとめていこうと考える、そんなリーダーが必要なんだ。これからはそのようなリーダーを育てなくてはいけない」
そのような話をしてリーダー教育の必要性をどうにか理解してもらった。
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