識者が断言。台湾脱線事故の原因が日本製車両ではない技術的証拠

 

では、いったい何が起きたのでしょうか?

あくまで仮説ですし、どちらも「最悪」と思いますが、2つのケースを想定してみたいと思います。

1つは、この車両は日本製ですがATPという安全装置は欧州仕様のものが使われています。システム上、純粋に日本の車両・システムであれば「空気圧が足りないのにブレーキが解除できる」とか「ブレーキ力が全体的に足りないのに制限速度以上で走れる」ような「安全装置の外し方はできないはずです。

ですが、「ハードは日本製+ソフトは欧州仕様」というチャンポンをやった結果、そのようなタブーが起き得るような状態になっており、運転士がATPを切った結果として、ブレーキ力が足りないのに140キロが出せたというストーリーは、描こうと思えば描けると思います。

これがどうして最悪かというと、仮に、あくまで仮の話ですが、そういった運用が可能であれば、どんなに日本の鉄道車両が優秀でも、輸出の仕方に問題があると、勝手に危険な使い方をされてしまうからです。

もっと最悪なのが2番目です。この台湾の東部というのは、山が海に迫る地形もあって経済的には開発が遅れた地域でした。また、中国から内戦を逃れてきた人々ではなく、少数民族など台湾に先住していた人々の多い地域です。

現在の蔡英文総統が属する民進党は、この東部の開発を推進してきた勢力です。ですから、仮にその東部の宜蘭線でこうした事故が起きて、しかもその原因が構造的な問題だということになると政治問題化する危険があるわけです。そうなると、運転士個人のヒューマンエラーという結論にどうしても誘導しがちになる、そんなファクターが絡む危険性もないわけではありません。

仮にそういった要素が働いて、真相解明ができないようですと、これこそ最悪の結果ということになります。そうならないように、事実の解明が待たれま
す。

image by: 蔡英文 - Home | Facebook

冷泉彰彦この著者の記事一覧

東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 冷泉彰彦のプリンストン通信 』

【著者】 冷泉彰彦 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 第1~第4火曜日発行予定

print
いま読まれてます

  • 識者が断言。台湾脱線事故の原因が日本製車両ではない技術的証拠
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け