ヨーロッパ最高の知性が断言。日本の「利他主義」が21世紀を救う

 

アタリ氏は、現在の世界の状況は、20世紀初頭に酷似していると言っています。20世紀初頭、先進各国で、富が溢れ、新しい産業が台頭していました。何より大きかったのが、民主主義や経済のグローバル化です。しかし、米国で発生した恐慌が発端となり、その後の不況の中で、世界を保護主義やニヒリズムが支配し、ヒトラー、ムッソリーニ、スターリンといった独裁者の台頭を許し、第二次世界大戦へとつながって行ったのです。21世紀初頭の今も、グローバルな市場経済と並行して保護主義の台頭が起きています。ひょっとしたら、20世紀初頭よりももっと大きな危機が訪れるかもしれないと言います。

キーワードとなるのが、市場経済と民主主義です。今、アジアの国々を始め、世界の多くの国は市場経済へと進んでいます。市場経済が発達した国では中産階級が生まれ、その後必ず民主化が始まります。中国も同じ道を辿るはずです。しかし、市場経済がグローバルで広がって行くものなのに対して、民主主義はローカルなものだと。私は、これに強く頷きたいと思います。グローバルな民主主義なんて存在しないのです。米国の正しいと思う民主主義を世界に押しつけたことが、今の世界の混乱を生んでいます。

市場経済が発達するとそれが民主主義の境界線を越えて拡大し、時には行き過ぎた競争が起きて、法による統治ができなくなります。また、市場経済と民主主義が発達するときは、人々が「自分のやりたいことをいつでも自由にできる」と勘違いし、不平等、不満、ナルシズム、不誠実などが蔓延し、時として、原理主義やテロリズムにつながる脅威となります。国連にはこれを監視し抑制するだけの力はありません。

2008年のリーマンショックは、結果的に、各国の政府に色々な権力を与えてしまいました。ヘッジファンドをはじめ、市場がひたすら利益確保に走り、誰もそれを止めることができない背景にも、金融緩和策が世界に大量のマネーを供給していることと深い関係があります。こうした状況の中、次の金融危機のリスクはすぐそこまで来ているとアタリ氏は言います。

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