在NY18年で身に沁みた、日本人社長の「自分はナニ人?」感覚

 

中途半端な立ち位置だからこそ伝えられること

実を言うと、ニューヨークに憧れて、つい先月、こっちに来られた駐妻の方が、僕たちより、よっぽどこの街に敏感かもしれません。彼女たちのように、僕たちがいまさら、エンパイアーステートビルの展望台に登ることは、まず、ない。グルメ雑誌をチェックして、トライベッカのおしゃれレストランに行くことも、仕事以外ではありません。

そうやって、どんどん、ニューヨークに対する憧れも消え、だからといって、東京に馴染むこともどんどん困難になっていく。結果、冒頭の「自分がナニ人かわからなくなるんだよねえ」と言った不動産屋のようになっていく…。

その怖さは、若干ですが、自分の中にある。中途半端なアイデンティティは、海外に住む世界中の移民の共通認識です。

でも、こうも思うのです。ニューヨークの本当の凄さを、バカさを、日本に伝えられるのは、僕たちなんじゃないか、と。今さらウエストビレッヂのスタイリッシュなカフェに足を運ぶのはおっくうでも。今となっては、東京の満員電車で静かに耐えることができなくなっても。

日本人の感性のまま、観光ではなく、この街の本物の深さを体感し、文字で、口頭で、日本にいる日本の人に伝えることができる。そこは、観光として来た人や、短期滞在の留学生ではなかなか難しい。

いまだに、よく聞かれる「ニューヨークと日本、どっちが好きですか」という質問に「どっちも好きだし、どっちも嫌いです」と答える自分がいます。本音です。そして、その答えは、長く滞在すればするほど、強く思うようになりました。

僕は日本人です。でも日本の人からすると、空気の読めない変な奴、です。でも、だからこそ、ニューヨーカーたちと理解しあえるところもある。今の、伝えていくことができる仕事に就けたのは、幸運だと思っています。

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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