このように、名古屋のご当地グルメとして有名なものは、他の地域で誕生したものが多いのです。こういう言い方をすると、名古屋はパクったものをご当地グルメとして売り出している、と思われるかもしれませんが、これはビジネス的観点からすると、正当な戦略なのです。流行りそうなものを探し出す嗅覚が優れているのだと言えます。これは、どんなビジネスの世界でも共通している基本なのです。
パクリだと批判することはできません。マネして広がっていくのは、自然なことです。そのグルメが、他の地域でも受け入れられるほどの力を元々持っていたということです。
ただし、名古屋で広まったこれらのグルメは、お洒落でもなければ、繊細でもありません。どちらかと言うと、飾り気のない庶民的な味です。叱られるかもしれませんが、このB級感が名古屋の人に合ったのでしょう。気取ったものを好まない性分なのではないでしょうか。
では、こうしたグルメが、なぜ名古屋発祥だと思われたのでしょうか。それは、“イメージの植えつけ”なのです。ただし、誰かが策略したのではなく、マネする文化によって爆発的に広まったことで、「名古屋と言えば○○」というイメージができ上がってしまったのです。
「味噌カツ」のお店がたくさんできることで、「名古屋=味噌カツ」というイメージが定着し、その情報がマスコミなどに流れます。すると、見た人が勝手に、味噌カツの発祥は名古屋だと思い込むのです。名古屋には、そうしたグルメがたまたま多かったのではないでしょうか。
ご当地グルメが無くて困っている地域は、この方法を試してみても良いかもしれません。ただし、まずはご当地の住民に受け入れられることが肝心です。地元に定着していないものは、ご当地グルメとは言えませんから。
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