意思決定メカニズムの問題
【東京】は1面左肩と2面の解説記事「核心」。見出しから。
1面
- 社長「法治国家でない」
- 革新機構 民間9取締役辞任
- 経産省を批判
2面
- 官民ファンド 矛盾で自壊
- 革新機構社長ら辞任
- 「民間の知見を」←→政府介入
uttiiの眼
1面。《東京》は見出しに「法治国家ではない」という、田中社長が会見時に使った最も刺激的な言葉を採用しつつ、問題は「報酬水準」だけでなく、「投資手法」を巡っての対立でもあったことを示している。
ともに辞任することになった冨山和彦取締役が「報酬の問題だけでなく、広範な事項について後から覆されるリスクが高い意思決定メカニズムになっていることが露呈した」と言っていることを紹介。この発言の意味は大きい。
2面。《東京》はこの問題を「安倍政権の掲げる成長戦略の柱の1つが揺らいでいる」問題として位置づけていることがリードに示されている。
《東京》が紹介する「投資手法」の問題は、「孫ファンド」云々ではなく、具体的な案件についての説明になっている。
田中社長は会見のなかで、不信の芽生えは就任直後に遡るとして、10月に副社長が見つけてきた米国の創薬ベンチャーへの投資問題を挙げている。日本企業との協業で「国内に米国の先端技術を還元することが狙いだった」のに、経産省や財務省との協議が遅遅として進まず、田中氏は、求められているのは「民間のベストプラクティスを活用する官民ファンド」ではなく、実態は「国の意向を反映する官ファンド」であることを実感させられたとしている。
こうした官民ファンドの根本問題について、記事は、旧大蔵省出身で慶応大学大学院の小幡積准教授に語らせている。
「官民ファンドは政治や省庁が介入するからうまくいかない」。「政治や行政にファンドを運営する能力がないから民間に協力を求めているのに、介入するならすべて解散すべきだ」と。
あとがき
以上、いかがでしたでしょうか。
《朝日》記事の劣化が目立つ今回のテーマ。高額報酬の件でスクープを飛ばして経産省を慌てさせたことで、「高額報酬」問題に逆に囚われてしまったというところでしょうか。他紙が揃って、「投資手法」の問題と絡めて報じているのと比べて、ちょっと惨めすぎます。どこかで挽回してほしいものですが。
というところできょうはここまで。
image by: Twitter(@世耕弘成)