いずも型改修が「攻撃型空母」保有とは言えない現実的な理由

DDH-183_いずも_(1)
 

いずも型護衛艦の空母化改修に関して、「攻撃型空母」なのではないかという批判が上がっていますが、一貫してそれを否定している軍事アナリストの小川和久さん。自身のメルマガ『NEWSを疑え!』で今回は、「攻撃型空母」とは、空母単体で成り立つものではないということを具体的に解説。日本が本当に「攻撃型空母」を保有する場合の必要戦力も提示し、如何にそれが非現実的なことであるか明解に説明しています。

「攻撃型空母」とはどういった戦力なのか

読者の方から、護衛艦『いずも』のF-35B戦闘機を搭載できる方向での改修についてご質問がありました。マスコミなどが「攻撃型空母になる」と批判しているのは疑問だということです。

そこで、「攻撃型空母」とはいかなるものかをご説明し、日本が「攻撃型空母」を持つための条件を述べてみたいと思います。

空母打撃群(Carrier Strike Group、CSG)は、米海軍の戦闘部隊の一つで、航空母艦1隻とその艦載機、1隻以上の巡洋艦、2隻以上の駆逐艦、1隻以上の補給艦、1隻以上の攻撃型原潜で構成されるのが基本です。しかし、米海軍サイトに『打撃群は必要に応じて構成・廃止され、他のものと異なるかもしれない』とあるように、艦艇数は一定ではありません。

2006年までは空母を護衛する艦艇は6隻が基本でした。それが、高性能なアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦(イージス艦)への置き換えによって、基準の3隻の場合でも防空能力は高まっています。 米国の空母打撃群は全部で11個群ですが、横須賀を母港とするロナルド・レーガンの第5空母打撃群は、イージス・ミサイル巡洋艦3隻、イージス・ミサイル駆逐艦7隻を備える世界最強の空母打撃群なのです。これに4万トン級の補給艦と2~3隻の攻撃型原潜がつきます。

空母打撃群の航空機は、空母が搭載しているものだけで戦闘機48~52機、ヘリ、早期警戒機、輸送機など80機以上にのぼります。

ロナルド・レーガンの打撃群の場合、巡洋艦、駆逐艦、攻撃型潜水艦が搭載するトマホーク巡航ミサイルは300~400発。さらにオハイオ級巡航ミサイル原潜の154発が加わると、合計500発前後の対地攻撃能力となります。これに48~52機の戦闘機の対地攻撃能力が加わります。

これが「攻撃型空母」です。米国は2~3個の空母打撃群を相手国に突きつけて、戦火を交えることなく相手を屈服させてきました。1996年3月の台湾海峡への中国の弾道ミサイル発射は、2つの空母打撃群を展開することによって収束しました。2つの空母打撃群の戦闘機の数と能力はオーストラリア、イタリアなどの空軍力を上回るものですから、中国といえども引っ込まざるを得なかったのです。中国が海空軍力の増強を進めているのは、このときの屈辱を晴らしたい面があることはいうまでもありません。

もちろん、空母打撃群を中心とする海軍以外にも、強力な空軍、海兵隊、陸軍が敵国への侵攻能力を備えています。これくらいの能力があって始めて、12月13日号に書いたように「戦争を終わらせる能力を備えた国」として、場合によっては先制攻撃も可能になるのです。

print
いま読まれてます

  • いずも型改修が「攻撃型空母」保有とは言えない現実的な理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け