日本が「攻撃型空母」を保有する条件とは
そこで日本が攻撃型空母を保有する条件ですが、それは米国が許しません。日本が攻撃型空母と攻撃型原潜を持つことは、日本が軍事的に自立する証だからです。日本が日米同盟を選択している以上、その点を見逃してはならないのです。
それに、日本が日米同盟を解消して軍事的に自立し、攻撃型空母の打撃群を持とうとしたら、どんな事態が起きるでしょう。
横須賀にいるロナルド・レーガンは定員5680人で、うち2480人は航空要員です。これにイージス艦10隻、攻撃型原潜が2~3隻と補給艦がついて空母打撃群を構成しています。人数の話をすれば、空母の5680人に加えて、イージス艦の乗組員320名×10、原潜の乗組員130人×3として、3500人ほどが必要です。つまり1個空母打撃群で約9000人が必要になるのです。
しかも、1個を即応態勢に置くには整備・点検に入るもの、教育・訓練に使うものと合わせて3個空母打撃群が必要ですから、その3倍で3万人弱の兵員を海上に配置しなければなりません。
海上自衛隊の場合、空母は5万トン級の通常空母、護衛艦も4~5隻にします。それでも空母打撃群に3000人ほどの人員が必要です。3個ほどをオン・ステーションにすることを考えると、教育・訓練は合理化するとしても空母打撃群6個を整備しなければなりません。これだけで2万人ほど必要になります。現在の海上自衛隊の定員は約4万5000人。これを7~8万人に増強しなければ、空母打撃群を保有することはできないのです。
もちろん、海上自衛隊の予算も現在の2~3倍以上にする必要があるでしょう。いま以上に港湾を整備し、母港の近くに飛行場を建設し、戦闘機も多数そろえなければなりません。マン・パワーについては当然、徴兵制の実施も含めて手当てを考える必要があります。
以上を考えれば、『いずも』の改修に関する「攻撃型空母」という批判も、その反対側にある「空母保有論」も、リアリティに欠けていることは明らかでしょう。(小川和久)
image by: Kaijō Jieitai (海上自衛隊 / Japan Maritime Self-Defense Force) [CC BY 4.0], ウィキメディア・コモンズ経由で