中国が目指す経済・外交圏構想である「一帯一路」。諸外国から愛想を尽かされつつある中、積極的とも言える姿勢で受け入れようとする経産省主導の中国融和策が物議をかもしています。AJCN Inc.代表で公益財団法人モラロジー研究所研究員の山岡鉄秀さんは無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』の中で、実利優先の中国への接近は将来に禍根を残すと警鐘を鳴らしています。
日本政府の中国接近の影に経産省の影?
先日、『志を忘れたエコノミックアニマル日本は、自ら中国の下請けになる』と題した記事の中で、米中貿易戦争の激化に耐えかねて日本を利用しようと歩み寄る中国を見て「チャンスだ!」と飛びついた日本政府と経団連にがっかりしたお話をしました。
報道によると、経団連の中西会長は「一帯一路」について、「中国は日本に協力を求めている。大きなチャンスが来ている」と本当に発言したらしい。これに対して、評論家の石平さんは次のように言っています。
しかし一帯一路は今、欧米諸国から批判されアジア諸国からも拒否されている。だからこそ中国は日本に「協力」を求めてくるのだが、それを「チャンス」と捉えるとはただの大馬鹿である。
私も心底驚くとともに、財界トップがここまで世界情勢が見えていないのかと落胆しました。日立といえば今でも一流企業のはずなのですが。
安倍首相も、訪中時の習近平氏との会談で「競争から協調へ」「脅威ではなくパートナー」「自由で公正な貿易体制の発展」の3原則を確認したことを成果として強調していますね。失礼ですが、そんな原則論を中国に述べて何か意味があるのでしょうか?
それで、尖閣海域への中国船の侵入は止まったのでしょうか?日本の排他的経済水域(EEZ)内に投げ込まれたブイも回収されていませんし、反日教育も中止されていません。
つまり、無視されたということです。
中国側がいつもとは違って何も反論しなかったことを捉えて、「日本の大勝利」だと称える記事もありましたが、中国側はもちろん「ここは日本人に言わせておけ、たっぷり利用してやる」と思っていただけです。日本人のお人好しは滅ぼされるまで治らないのでしょうか。
この日本政府と財界の世界の真逆を行く行動には前述したように心底驚きましたが、気になるのは、あちこちで「経済産業省が日本企業に中国企業と協業するように指導している」とか、「安倍首相を動かしているのは外務省ではなく経産省」という話をちらほら聞くのです。
そんなことが本当にあるのか?と訝しがっていたのですが、どうやら本当だったようです。
ジャーナリストで産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久さんが、日本政策研究センター発行の『明日への選択』平成31年1月号で、インタビューに答えて次のように述べています。
私が今心配しているのは、安倍首相の周辺にいる経済産業省出身の人たちの考え方です。私は前身の通商産業省時代からその人たちを知っているけれども、「今の通産省には日米同盟を本気で信じている人間は一人もいない」とか「対中ODAをやめろと言うのはけしからん」と面と向かって言われたことがあります。
彼らは日本はマーケットでの実利的な面、あるいは実務的な面で、中国ともっと親しくすることが日本にとっていいことだと信じている。その一方で、自分の言いたいことを言ったら牢屋に入れられてしまうというような共産中国の邪悪な一面についてはことさら無視するのです。そういう人たちが安倍首相の傍らにいて、中国に擦り寄ろうというのであれば、それは間違っています。日本にとって何もいいことはない。むしろアメリカとの齟齬が当然出てきて、同盟関係を毀損しかねません。
恐ろしいことです。経産省の人々は完全に中国の工作にやられているのでしょうか?