「虚構の景気回復」を演出するしか能がない安倍政権は、アベノミクスの成果を「株価」でしか示すことができないため、とにかく株価を下落させないために常識を逸脱した買い支えを日銀にやらせて来た。たとえば、去年12月28日の大納会では、2万円割れの状況で年越ししたくないからと、最後の10分間で日銀は703億円も注ぎ込んで株価を1万9000円台から2万円台に戻したのだ。ちなみに、これまでに日銀が買い支えて来たETF(株価指数連動型上場投資信託)は、昨年末までに23兆1165億円で、去年1年間だけでも6兆2100億円も注ぎ込んでいる。
民主党政権最後の2012年度の日経平均株価は、8000円台半ばから9000円台前半を行ったり来たりしていた。当時と比較すれば現在の2万円超という株価は2倍以上の大幅アップだ。だから安倍首相も年頭所感などで「民主党政権時代より株価は大幅にアップしました」などどドヤ顔で連呼して来た。そして、この株価だけを見れは、日本の景気は回復したかのように感じられる。
でも、日銀がETFに6兆円注ぎ込めば株価は約3000円上がると言われている。これまで日銀はETFに23兆1165億円も注ぎ込んでいるのだから、6兆円の約4倍、つまり「3000円×4=1万2000円」ということになり、現在の株価から1万2000円を引いたら8000円、民主党政権時代よりも株価は下落してしまうのだ。この事実を知れば分かるように、現在の2万円超の株価は決して日本の経済が成長した結果などではなく、ただ単に日銀が莫大な予算を注ぎ込んで意図的に引き上げた「ヤラセの株価」でしかない。
ちなみに、これまで日銀が注ぎ込んだ23兆1165億円の株式は、売却すれば約25兆円と試算されているので、約2兆円の含み益がある。つまり、額面上は損はしていないことになる。でも、この株式は売却できないのだ。何故なら、売却した瞬間に株価が大暴落して日本の金融経済がジ・エンドになってしまうからだ。額面上の価値はあるのに、決して売ることのできない資産。現金輸送車を襲って10億円を強奪することに成功したのに、その10億円はお札の番号がすべて控えられていたため、1万円札1枚すら使うことができない。これと同じで、まさに宝の持ち腐れだ。
もしも去年、日銀が6兆円を注ぎ込まなかったら、昨年末の株価は1万7000円台にまで下落していた。実体経済が横這いのままなのに、株価だけを下落させないように買い支え続けるためには、こうして毎年6兆円ずつ注ぎ込むという自作自演を続けて行かなくてはならない。これが、株価だけは良いが庶民の生活はいつまで経っても良くならない「虚構の景気回復」の仕掛けであり、元旦から大嘘を垂れ流すしか能がない安倍首相の伝家の竹光(たけみつ)「アベノミクス」の正体なのだ。
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