裁判傍聴芸人として名高い阿曽山大噴火による連載『裁判妙ちきりん』第23回!
法廷でしか味わう事のできない裁判のリアルをお届けします!
罪名 住居侵入
被告人 26歳のアルバイトの女性
事件は今年の10月13日。
東京都内の被害男性宅に、被告人が玄関から侵入したという内容。
事件の中身は一旦置いといて、この裁判は傍聴席が満席。
というのも、被告人の名前を検索すると、ある女優の名前と一致。
個人的には、芸能人とか詳しくないので、開廷表を見てから被告人の名前を検索して、「この人、芸能人なのか」と知ることも多いわけです。
もちろん、単なる同姓同名でまったくの別人ってことも多々あるけど。
人定質問で被告人は職業を訊かれ、「アルバイトと、役者を目指して活動を……」と言ってたので、本人ってことなんでしょう。
被告人の公式サイトには2019年に主演映画が公開されると書いてあるので、立派な女優さん。
初公判の期日を知ってたファンが傍聴席を埋めたってってことなんでしょうかね。
てっきり記者かと思ったけど、メモ取ってる人が少なかったし、ニュースとして記事が出てきてないので。
個人的には傍聴に来てた週刊誌の記者に取材を受けたので、詳しくはそちらを読んでいただくとして。
検察官の冒頭陳述によると、被告人と被害男性は2013年に知り合ったという。
(どういう関係かは明らかにされなかったけど)
2017年に被害男性は関係を絶ちたいと、別れを告げたらしい。
しかし、被告人は何度か被告人に会いに行き、被害男性は警察に相談。
今年の4月に、被告人は警察からストーカー行為で警告を受け、会いに行かないように言われたとのこと。
そして、犯行当日の午後10時49分。
被告人は、被害男性宅を訪れ、無施錠の玄関から侵入し、地下のスタジオのほうへ降りたという。
すると、被害男性の奥さんが被告人の姿を発見。
すぐに夫である被害男性に状況を伝え、逮捕に至ったというのが事件の流れです。
罪名は住居侵入だけど、ストーカー規正法違反の事件になりますね。
調べに対して被害男性の妻は、「自宅の地下はダンススタジオになっていて、利用者がいるので玄関は施錠していなかった。人の出入りはあるが、被告人は許可していない」と述べているという。
被害男性は「5年前に知り合った。2017年3月に関係を絶ちたいと告げたが、その後、迷惑行為があり、警察に相談して警告してもらった。当日、妻から被告人がいると言われたので一階に降りると、被告人は玄関から外に出ようとしていた。許可なく入っちゃダメだと言うと、話がしたいと言っていた」
と述べているそうな。
法廷には、被告人の父親が実家からやってきて、情状証人として立ってました。今後は実家で同居して、東京での仕事は通いにさせて監視すると約束です。
そして、被告人質問。まずは弁護人から。
弁護人
「A(法廷では実名)さんはあなたにとってどんな人ですか?」
被告人
「私が最も尊敬する人で、私の人生で最も大きな影響を与えてくれた、人生のすべてを変えてしまうような存在です」
弁護人
「どうやって知り合ったんですか?」
被告人
「フェイスブックに映画のポスターを載せていたら、それを見た彼の方から、息子がかかわっているとメッセージをもらってです」
弁護人
「その後は? 会ったりとか」
被告人
「しばらくはメッセージで文通してまして、一度会いたいと言われて2013年の年末に。会って、一眼レフカメラで撮られたりして。私はAさんの写真の美しさとかを尊敬してて、そしたらAさんから……」
と、具体的なエピソードが語られたところで、傍聴席から「バリバリバリ」と紙を折りたたむ音が鳴り響いて、被告人の声が聞こえず。
よく見ると、その紙を折っていたのは被告人のお父さん。
証人尋問の内容が書かれた紙を小さくしてポケットにしまうところ。
偶然、このタイミングで音を立てたのか、満席の傍聴席に聞かせまいと思ったのかは定かじゃないけど。
弁護人
「その後、連絡は?」
被告人
「6日間連絡がなくて。それでメールが来て、少し強引だったと謝罪の内容でした」
弁護人
「その後に会ったのはいつですか?」
被告人
「2015年の夏、7月位に親友が間に入って、2人で話す機会を作ってくれて、でも、Aさんを目の前にしたら世間話になってしまって。あの日のことを訊きたかったんですけど。Aさんから、テーブルに手をついて、『ごめんなさい』って言われたんですけど、全部許せる気持ちになれなくて」
2013年に強引に進められた何かが、被告人にとっては許せないって気持ちが長年あったようです。
だから、何度も会いに行ってたと。
弁護人
「警察官から会うなと言われたのが、2018年4月。それ以降は?」
被告人
「行ってないです」
弁護人
「ちなみにAさんの家って?」
被告人
「自宅兼コンサートホールで、毎日催し物が行われています」
弁護人
「当日、話したくて行ってしまったと」
被告人
「はい。家の前にダンサーの男性がいて、声かけてくれて。中に入れてもらって、wi-fi貸してくれたりとか」
入るつもりじゃなく、家の前まで近づいたら、事情を知らない人が招き入れたってことですかね。
弁護人
「今、相手に対してどう思ってます?」
被告人
「AさんにもAさん以外の人にも迷惑かけて申し訳ないです、怖い思いをさせて」
と謝罪の言葉を述べたところで、時間切れ。
弁護人からの質問だけで閉廷となりました。
そして、10日後。
検察官の質問から再スタート。
検察官
「どんな警告受けてました?」
被告人
「本人や家族に接触しちゃいけないと」
検察官
「今後、被害男性とはどうしますか?」
被告人
「5年前の傷が消えることはなくて、心に残ってると思いますけど、行動に出ずに、第3者を介して、解決したいと思います」
と、まだあのときのことが忘れられないと明言です。
最後は裁判官からの質問。
裁判官
「家族にはすべて話しました?」
被告人
「はい。母が5年前のことを支えてくれると言ってくれました」
裁判官
「どうです? Aさんに会いたいとは思いませんかね?」
被告人
「ん~……、話したいというのが大きかったので、誰か弁護士とか介してできるのなら会わなくていいと思っています」
と、会う気はないと誓って質問終了。
この後、検察官は懲役6ヶ月を求刑。
弁護人は前科もなく初犯なので執行猶予が相当と弁論です。
そして裁判官が、その場で判決の言い渡し。
結果は懲役6月執行猶予2年でした。
そして、
裁判官
「男性に対して、いろんな思いがあるのは伝わります。そこは弁護士の先生に任せてね。あと、お父さんとよく話してくださいね」
と、コミュニケーションを増やせとアドバイスして閉廷でした。
──もしこの裁判がフィクションだったとして。私は被告人の言葉に対して──
会う機会を作った親友なら、まだ揉めていたのかと思うだろうなぁ。
ま、12月10日と21日に実際に行われた裁判なのだが。
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