日本はモルヒネの使用量が先進国で最低レベルである。日本のがん患者は先進国ではトップクラスの、世界平均以上の激しい痛みに耐えている。がんの痛みを取り除く基本は、モルヒネあるいは類似薬物を薬として飲むという単純なものだ。しかしこの方法(WHO式がん疼痛管理プログラム)を知らない医師も非常に多いようだ。無慈悲な医療者側には、患者の痛みに対する関心が乏しい。
日本人男性の発がん原因のトップは喫煙で約3割、男女合わせた日本人全体の1位は感染症である。B型肝炎ワクチンとHPVワクチンは、多くの国で定期接種が勧められているが、日本では極めて消極的だ。学界が接種を推奨する一方で、国としては積極的に推奨を行わないという不可解・無責任な状況が続いている。
遺伝はがんの原因の5%に過ぎない。がんは宿命ではない。2/3は生活習慣で、早期発見のカギはがん検診である。生活習慣を整え、検診をきちんと受ければがん死のリスクは大きく減らせる。ほとんどのがんは、見つかってから時間が経つほど転移する割合が増える。早期発見のためには、検診を受けるしかない。
がんになったとしても、緩和ケアを受ければ、最後まで自分らしく生きられる病気なのだという。適切な緩和ケアが前提だが、「がんは人生を仕上げ、愛する人たちとの時間を与えてくれる病気です」。あまり行きすぎた治療をしない限り、寝たきりにはならない。このへんは医者次第のような気がするが。
対談で現れた養老孟司さんは、いつのとおり「がん検診も人間ドックも受けないで起こってくる結果は、自分で背負うしかない。がんになったらなんて、そんなこと気にしてません。余計なお世話というかんじ」と言って笑う。がんは全体で65%が治る。早期がんの場合が約95%。検診を受けよう。
編集長 柴田忠男
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