なぜ、賃金は0.6%UPしても年金額は0.1%しか上がらないのか?

 

にしても新しく発表された物価は1.0%上げ賃金は0.6%増となりましたが、なぜ年金額はそれよりも低い0.1%程度の伸びなのか?それは、今まで何度も言ってきたマクロ経済スライドが発動したからです。マクロ経済スライドは今年度は0.2%で、前年度(平成30年度)から繰り越されたマクロ経済スライド0.3%の合計0.5%が賃金0.6%-マクロ経済スライド0.5%=0.1%となって今回の0.1%の年金額の伸びになりました。

物価が1.0%上がって、賃金が0.6%上がったという状況であれば、65歳以上の人(実際は68歳到達年度の人。既裁定者という)は物価に変動させ、65歳未満の人(実際は67歳到達年度までの受給権者。新規裁定者という)は賃金に変動させる。しかし今の年金額改定のやり方はそう単純ではない。

年金額は0.1%上がりますが本来の伸びよりも低いから年金額の価値が落ちた状態となっています。そんな!年金額を物価の伸びに合わせないと目減りするやないか!って言われそうですが、まさにそう。しかしこれはやらなければならないとても重要な事なんです。

経緯を簡単に述べますと、平成12年改正の時に65歳以上の既裁定者の人は原則として物価に合わせるっていう事にはなりましたが、基本的には賃金の伸びよりも物価の伸びのほうが低い事が多いので高齢化社会にとってはちょっとした年金抑制策だったんです。とりあえず物価に合わせとけば購買力の維持にはなる。

でもそうじゃない今回の平成31年度の物価上昇と賃金上昇率のような事もある。平成31年度の物価は1.0%上げだったですが、賃金は0.6%上げだった。賃金の伸びが低い。これをそのまま年金額に当てはめて、物価の伸びに合わせると実際に年金受給者の支え手である現役世代の賃金の伸びの力を上回ってしまう。そうなると支え手の現役世代の力を超えた年金額を支給してしまう事になる。つまり年金給付と、保険料負担のバランスが崩れてしまうんですね。

年金というのはこの給付と負担のバランスが崩れると危険なので、賃金の伸びより物価の伸びが上回った場合は賃金の伸びに合わせるという事になっています。
そして用いた賃金上昇率から更に、マクロ経済スライド率で下げるあくまでも現役世代の負担能力を超えないようにする事でバランスを保つわけです。

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