中国の犠牲者が続々。途上国を蝕む「一帯一路」のやりたい放題

 

カジノの客はもちろん中国人が中心で、そのためにシハヌークビル国際空港では無錫、武漢、成都、昆明、杭州、深川など中国の地方都市からの直行便がドンドン増えている。かつてはマカオが米国のラスベガスを凌ぐほどの隆盛を誇ったが、習近平の汚職摘発運動で党・政府の高官や国営企業幹部のド派手な遊びがなくなり、今は地方のちょっとした小金持ちがシンガポールやカンボジアで遊ぶのが流行っていて、間もなくカンボジアのカジノ産業がマカオを上回りそうだとまで言われている。そうなるには、もはやシハヌークビル空港が手狭なのでこれを拡張する計画と、プノンペン空港に降りる北京や上海など大都市からの客を運ぶための4車線の高速道路を中国が資金を出して建設する計画とが進められている。

カンボジアのカジノは、ここと、もう2カ所、プノンペンから東へベトナムのホーチミンに通じる国道1号線を170キロ走った国境の町バベット、そして5号線を北西へ400キロ走ったタイとの国境のポイペトの計3カ所に集中している。いずれも、自国内では禁止されているカジノで遊びたいタイ人やベトナム人の小金持ちが相手だが、中国人はワンランク上で、飛行機でプノンペンやシハヌークビルに飛んでくるのである。

バベットも翌日訪れてみた。何もない原野のような所に数十軒のカジノ&ホテルがひしめき合い、裏に回れば中国人建設労働者向けの共同住宅と貧弱な中華料理店ばかりという「中国カジノ資本主義の哀れな姿に、胸が潰れた。

さて、首都プノンペンには特例によって1軒だけ、それこそ安倍晋三首相が誘致を切望する超高級「統合型リゾート」の好例としてNAGA WORLDが存在する。これはマレーシア華僑の大金持ちでかつてフン・セン首相の経済顧問を務めたチャン・リップケオンが首都圏のカジノ利権の独占権を与えられて経営している。キンキラキンのロビーに入って行くとまず目立つのは、奥のラウンジ・バーにたむろする派手な女性たちの客待ち姿ではある。しかし、その両脇の広い賭場を覗くとブラックジャックのテーブルや全電子式のルーレット台に群がる人々は割と普通で、サンダルを引っかけたような風体で入って来たオバさんがルーレット台に座るや無造作に100ドル札を財布から抜いて投入口に滑り込ませ、慣れた手つきでボタンを次々に押してゲームをセットして行く様子にあっけにとられてしまう。大阪のオバちゃんが買い物代わりにちょっとパチンコ屋に立ち寄ったという風情である。

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