シャツを、ズボンを、ペットボトルを浮き輪代わりにする方法とか、海で沖に流された際の対処法とか、上空から見つけてもらいやすくする方法とか、たぶん今後一生出会わない事態のことを熱心に読んだ。危機管理のプロが教える、と銘打ったわりにはショボいというか、小さな雑学っぽい内容が多い。ライフハックが中心で、わざわざ「自衛官が~」というほどでもないような気がする。
わたしがコレは役に立つかも、と思ったのが「ブルーシートと新聞紙を寝袋にする方法」だ。ブルーシートを納豆の藁容器のような形にし、両端をまとめてガムテープで巻き付ける。その中に新聞紙を敷き詰めれば即席の寝袋になる。中に入り顔だけ出して使う。妻から家を追い出されたときに使えるテクニックだが、実用化したくはない。
開きにくい壜のフタを開ける方法とか、缶切りなしで缶詰を開ける方法とか、はさみの切れ味を良くする方法とか、迷彩服着てやるには低レベルな物件が少なくない。本当に役立つと思ったのは、「ストップウォッチなしで正確な時間を計る方法」で、数字の前に100をつけるとよい。101、102、103……110までだな。確かに秒間隔がズレにくい。これは面白い。しかし、そんなテクニックを使うときがあるのか。
ホンモノの自衛官が出演しているのに、内容は「ちょっとしたアイデア」みたいなものが多いし、防災に特化したわけでもないし、中途半端でしまらない本だ。「本書を読んで防災意識を高めてみませんか?」なんて言われてもなあ。そもそも、ライフハックがコンセプトでは、まともな防災本ができるわけないだろう。
編集長 柴田忠男
image by: Shutterstock.com