3.11震災時、気仙沼・本吉の障がい者たちが居場所をなくした理由

 

地元の学校に行かなかったことで、なじみの友達もいないし、地域住民も朝と夕方にバスに乗り降りするだけの生徒の存在すら気づかず、「特別支援学校」という偏見もあり、地域での居場所が確保できなかったという。その結果として、震災が発生して地域の小学校が避難所になっても、自閉症傾向が強い障がい者の場合は、「知らない学校」には入っていけず、結局自家用車の中で生活し続けることになったのである。

だから、「つながりたい」なのである。彼女たちの願いは当初から今も変わらず、親と子が一緒に住めるグループホームの建設だ。首都圏で就労移行事業を行っている立場から見れば、この方たちの障がいは重度であり、福祉サービスでいえば生活介護が必要である。そして現在も生活介護を利用しているが、親の高齢化もあり、ますます地域で支えあう必要を感じている。

つながらなかった障がい者と地域が母親の問題意識を媒介につながり、それが世代でも受け継がれていく─。本吉つながりたい、を結成したことで、その理念は伝わったが、実際の福祉サービスに結び付けるかは、地域課題が横たわる。福祉サービスを担える人材不足である。

地域福祉サービスを提供する際に必要最低限の要件を満たす人が確保できたとしても、福祉への深い理解のもとで仕事をし、そのコミュニティに新しい考えを取り入れつつ、地域で信頼される施設を作れるかは、人口の少ない地域では特に深刻な課題だ。

福祉施設がない場所には福祉の人材は育たないし、特別支援学校が存在しない地域では教員OBも少なく、首都圏で巨大勢力になりつつある「活躍したいシニア世代」もいない。ならば、外から障がい者とともに人材を呼び込もうと、現在熱い議論を展開している最中である。

image by: 本吉絆つながりたいホームページ

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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