日本はチャンスを生かせるか?米朝会談決裂で開いた日朝交渉の扉

 

2つ目は、北朝鮮側がアメリカの「合意を欲する度合い」を見誤ったのが理由だと考えられます。「ロシア疑惑に関する捜査が大詰めを迎え、年当初から議会運営でも苦戦しているトランプ政権は、失地回復と事態の改善のために、北朝鮮との“合意”をアピールしたいと望むはずだから、大きな妥協をするだろう」というのが、北朝鮮側の読みだったようです。

その表れが、今回の会談を失敗へと導いた「対北朝鮮制裁の全面撤回」という要請に見て取れます。一種の賭けにも思えますが、アメリカサイドの関係者からの情報では、2月28日午前の会談時にこの要請が出された時点で、トランプ大統領は「話にならない」との反応を示し、今回の会談での合意を諦めたようです。

それは、“非核化”(注:アメリカ側の定義での非核化)については、ゆっくりでいいが、それに比して制裁の解除もゆっくり、段階的に行う、というのがアメリカサイドの譲れないライン(red line)でしたが、北朝鮮側からの要請は、そのred lineを大きく超える内容であったというのが理由です。

その要請が出された時点で、予定されていたランチ会も、合意文書への署名“イベント”もすべて吹っ飛んだ、とのことです。トランプ大統領からの拒絶に遭い、金正恩氏は交渉の席を立って、挨拶もなく帰国の途に就いた模様です。

3つ目は、メディアなどでは報道されませんでしたが、会談における金正恩氏の発言内容から、韓国の“裏切り”について、トランプ大統領が確信を持ったというのも理由のようです。

対北朝鮮制裁の要として、日米韓による包囲網が挙げられますが、昨年6月12日の第1回米朝首脳会談以降、韓国政府のフライング行為が相次ぎ、公海上での瀬どり(原油の密輸)や、南北経済協力の実施、そして38度線からの“国連軍の撤退”などが、同盟国への相談もなく進められました。

暴走する韓国政府に対して、ボルトン補佐官やハリス駐韓大使などを通じて再三警告が出されましたが、文大統領は聞く耳を持たず、文政権への批判的な立場をとる国内勢力の表現を借りれば、ひたすら北朝鮮への“貢”(みつぎ)行為を繰り返した結果、トランプ大統領からの信頼は完全に失墜していたようですが、今回の会談で、金正恩氏から韓国による支援についてのimplicationsが出されただけでなく、“南北は一枚岩”との表現が繰り返された模様で、それがトランプ大統領の逆鱗に触れたという事情もあったようです。

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