交渉のプロが懸念。「四面楚歌」の韓国が、北朝鮮を追い詰める

 

2つ目に、中国が直面する危機が、北朝鮮を孤立させるという点です。第2回米朝首脳会談までは、習近平国家主席は金正恩氏の後ろ盾として君臨し、米朝首脳会談を後押ししつつ、緊張が続く米中関係での取引材料(コマ)として北朝鮮情勢を見ていたようですが、会談が決裂し、先行きが不透明になったことに加え、金正恩氏および北朝鮮から中国に対しての“非礼”を受け、今月に入ってからは北朝鮮を一気に突き放す動きに出ています。

その動きをより加速させているのが、貿易に留まらないアメリカとの緊張の高まりです。貿易面での折り合いがつかない状況と並行して、南シナ海における米中の軍事的な緊張も高まる一方です。両国の艦船のにらみ合いが続く中、そこにフィリピンやインドネシア、ベトナムも中国包囲網に参加し、南シナ海問題は、すでに地域問題から国際的な紛争の種にまで発展していると思われます。

そして、アメリカの太平洋艦隊と沖縄などに駐留する作戦部隊が拡充され、朝鮮半島のみならず、広域の北東アジア・東南アジアをにらむ配置になっており、何か偶発的な衝突でも起きてしまえば、後戻りできない状況に発展する可能性をはらんでいます。

日本のメディアなどの論調を見ると、軍事的な衝突はないとみており、あっても、アメリカの軍事演習の拡大程度だと考えている様子ですが、アメリカの部隊の編成を見ていると、本格的な作戦実施に備えた形になっていますので、軍事的なオプションが選択される場合、演習の拡大程度では済まないのではないかと考えます。

仮にアメリカが北朝鮮への軍事的な行動に出た場合でも、すでに以前述べたように、中国が北朝鮮の側に立って参戦することはないですし、できないでしょう。それが、中国も直面しているアメリカの軍事的なプレゼンスの脅威です。

北朝鮮の駐中国、駐ロシア大使が最近、平壌に呼び戻され、外交的な方針を指示されているかと思いますが、中国やロシアを頼りにしているのだとしたら、有事の際には期待外れに終わり、単独で(もしかしたら韓国と共に)アメリカと対峙しなくてはならなくなる可能性が高いかと思います。

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