交渉のプロが懸念。「四面楚歌」の韓国が、北朝鮮を追い詰める

 

3つ目には、韓国が直面する四面楚歌が、最終的には北朝鮮を追い詰める可能性です。 すでに第1回目の米朝首脳会談以降、あまりにも勝手に動き過ぎて、トランプ大統領からも見捨てられた文大統領と韓国ですが、日を追うごとにアメリカへの反抗姿勢が鮮明になってきていることや、日本に対して威嚇行為を繰り返していること、そして中国からも相手にされていない現状、さらには、ラブコールを送り続けても、一向に訪韓してくれない金正恩氏…。

加えて、国内で勢いづく文政権批判。完全に今の韓国政府は国際社会において四面楚歌と言っても過言ではないでしょう。ついには野党の議員からも「文大統領は北朝鮮のスポークスマンに過ぎない」との批判まで出る有様で、混迷の度合いを高めています。南北の対話の進捗も年明けから滞っていますし、調べてみると、直接的な対話も拒まれている様子です。

そのような中、米朝間の緊張が再度高まる状況に直面し、完全に手が詰んでしまっているように思われます。恐らくアメリカが軍事的な行動を覚悟し、実行することに決めても、すでに韓国を見捨てているトランプ大統領から文大統領に事前に通告もないかもしれません。そのような状況で果たせる役割は、韓国にはもうないのかもしれません。

このような状況下では、日本はこれまで以上に厳格に対北朝鮮制裁を実行するしかありませんが、仮にトランプ大統領が北朝鮮攻撃に踏み切った場合、大きなジレンマに直面することになります。自国の安全保障問題と合わせ、拉致被害者をめぐる問題の解決をどうするかという点です。

米朝対立が過熱し、対応に窮する北朝鮮から日本にアプローチがあれば、解決の糸口が掴めるかもしれませんが、その場合、気を付けないといけないのは、アメリカとの共同歩調を崩さないことはもちろんとして、非核化の問題と同様、検証のプロセスを事細やかに決定し、拉致被害者の生存確認はもちろん、帰還にかかるプロセスも北朝鮮頼みにせず、主導権を握って行動することです。恐らくそのきっかけ(拉致問題の解決のきっかけ)となりうる出来事は、仮に起きたとしてもあと1回だけかと思います。

まだまだ不確定要素が多く、言いきれないことばかりですが、1つ言えることは、残念ながら第1回米朝首脳会談で開きかけた希望の扉は、閉じつつあるということでしょうか。年始に2019年は混乱の1年になると申し上げましたが、3月の時点で、その混乱の芽が大きくなってきていることを感じています。

国際秩序と安定の崩壊がどこを発端として始まってしまうのか。非常に懸念しています。

島田久仁彦(国際交渉人)この著者の記事一覧

世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

有料メルマガ好評配信中

    

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』 』

【著者】 島田久仁彦(国際交渉人) 【月額】 ¥880/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 金曜日(年末年始を除く) 発行予定

print
いま読まれてます

  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け