2.仕事が客観化されていないという問題
そもそも、どうして引き継ぎという作業が生じるのでしょうか?それは、業務マニュアルがキチンと整備されていないからです。本来、あらゆる実務の仕事の進め方というのは、マニュアル化されているべきです。
マニュアル化されていなくては、例えば有給休暇を取る際に、誰かに業務を代わってもらうこともできないわけです。反対に、マニュアル化がされていれば、引き継ぎの作業は極めてスムーズになるはずで、まずはマニュアルを読んで、どうしても理解できない点を確認することで終わるはずです。
現代でもそうだと思うのですが、少なくとも仕事というのは、マニュアルに基づいて行い、同時にマニュアルを最新の条件、つまり社会の環境、外部環境、技術革新、制度改正などに合わせて、逐次アップデートすることも入っているはずです。マニュアルに基づいて仕事をしながら、マニュアルを更新するというのは業務を進めていく両輪だと思うのです。
ですが、往々にしてマニュアルのアップデートというのはおろそかになりがちです。そうなると、引き継ぎの際に、マニュアルと現実とに乖離が起きてしまい、その部分に関しては口頭であれこれと注意事項を伝えなくてはなりません。
これは避けるべきことですが、仮にその前任者に大きなスキル不足や取り組み姿勢の問題が「ない」にも関わらず、マニュアルのアップデート、つまり仕事の客観化ができていないのであれば、それは職場や外部環境に問題があると考えるべきです。
3.引き継ぎの中身が問題
では、マニュアルが最新の状態になっていれば、何も問題がないかというと、そうではないケースもあります。引き継ぎというのは、本来は業務マニュアルを渡して、そこに現在進行形の問題についての説明を加えれば済むはずです。ですが、実際はそうではありません。マニュアルに書いていないこと、書けないことがある場合、その説明に時間がかかるという問題があります。
もしも、この「マニュアルに書けないこと」というのがあるのであれば、これは大きな問題です。何が問題かというと、2点、つまり「反社会的なこと」と「改革や改善に逆行すること」だからです。
日本の企業は相当に規模の大きい会社でも、様々な脱法行為を働いています。例えば、今はかなり難しくなりましたが、つい数年前までは「1ヶ月30時間を超えたら、働いても残業手当の申請は自粛」などという話は、ザラにあったわけです。また経営者の報酬を決めるのは、「本当は社外役員による報酬委員会」のはずなのですが、経営者自身が「来年のオレの報酬はこんな金額になってもおかしくないだろ」みたいなことを事務方に言ってくると、事務の方が色々根回して頭下げたりみたいなこともあるわけです。
もっと言えば、反社会勢力の発行する雑誌に広告を出すよう脅されて、それが切れないとか、社員に慰労会の大盤振る舞いをしておいて、税務調査が怖いので色々偽装をするとか、コンプライアンス重視という掛け声の裏で、結構反社会的なこと、あんまり胸を張っては言えないこと、を抱えているのです。
非上場のオーナー企業で、オーナー一族には管理部門がコッソリ便宜を図っていたりというような話も、担当から担当にコッソリと引き継がれます。そうした部分というのは、業務マニュアルには書けません。ですから口頭での「引き継ぎ」になるわけです。








